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事業用不動産のビルを売却、そのポイントとは?

2020.12.22

自社ビルの売却を検討するケースは、珍しくない。不動産価値は周辺環境の変化、市場、社会の変化で大きく変わる。その変化に対して、自社所有の事業用不動産を売却するということは、必ずしもネガティブなことではなく、事業を成長させるための手段でもある。では、実際に、自社所有のビルを売却する際に気をつけるべきポイントについてまとめてみた。

一般的な不動産売却と事業用不動産(ビル)売却の違いとは?

不動産売却というと、一般的には不動産会社に依頼して広告をだし、買主を探すという流れを連想するだろう。ところが、事業用の不動産の場合はあまり大々的に広告を打つ場合は少ない。自社ビルでもテナントが入居しているケースも多く、売却の情報が知られるとテナント側に混乱が生じることもあるからだ。それを避けるためでもあり、もう一点、自社所有のビル売却が取引先に知られると「手元資金が足りないのでは?」「経営に不安要素があるのでは?」と勘ぐられる可能性もあることが関係する。実際には、事業の転換や周辺環境、事業環境の変化に応じたポジティブな売却も多いのだが、一般的なイメージの影響は大きいため、売却を公言するケースは少ないと言える。

特に、オフィスビルの売却では、情報をあまり明かさずに買主を探すことに加えて、売買規模が大きくなることもあり、売却を検討し始めてから、実際に売却に至るまでに時間がかかることが多い。広告展開をしないこともあり、売却を依頼した不動産会社のネットワークに買主探しを依存する傾向も大きく、信頼できる不動産会社と付き合い、納得できる取引ができるまで、じっくりと腰を据えて取り組むことが必要だ。自社オフィスとしても使用していたビルを売却する場合には、そのまま買主と賃貸契約を結び賃借するケース(セール&リースバック)の他に、新たな賃貸オフィスへの移転、新たな自社ビル不動産の取得なども選択肢となる。そういった経験も豊富な不動産会社が望ましい。
最近では、コロナ禍の影響でオフィス需要に大きく変化が出てきており、事業用不動産の用途転換の需要が高まっている。そのためか、不動産仲介業者から売却の声がかかることも増えているようだ。豊富な情報を持つ不動産仲介業者もいるが、手数料収入にこだわり売却を急ぐ不動産仲介業者も多いと聞く。大切な事業用不動産の売却については、慎重な姿勢が望ましい。

セール&リースバックに関する詳細はこちら

テナントが入居していても売却できる?
事業用不動産と収益性不動産の売却

自社ビルといっても一部テナントへ貸すこともある。その場合、自社ビルを売却する場合に気になることとして「テナントが入居していても売却できるのか」という点がある。これは珍しいケースではなく、通常、オーナーチェンジという形で、テナントが入居したまま売却できるし、テナントも契約条件は同じものを引き継ぐ形になるので、大きな問題にはならないはずだ。

では、「空室があったほうが良い」のか、それとも「テナントが埋まっていたほうが良い」のかという問題がある。通常、収益性物件の場合は、空室があると収益性が悪いと判断されることもあり、満室状態で売却したい。一方、自社ビルとして使っていたオフィスビルなどは、買主が自社ビルとして使う、収益性物件として活用するなど、用途の幅が広がり、また空室状態のほうがリフォームやリノベーション(リニューアル)しやすく、需要が高い場合がある。いずれにせよ、周辺の不動産需要と買主の購入目的で状況が変わる。その点を踏まえて、売却交渉を進める必要がある。

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続いて「売却のタイミングはいつがいいのか」という課題がある。新型コロナウイルスの影響で、働き方の多様性が急速に進んでいる現在、オフィスビルのあり方そのものが見直されている。そのため、オフィスビルの市場動向も変化していることは間違いない。このような環境では、不動産市場も活性化する可能性がある。もう一点、一般的に言われることだが、不動産は金利が低いときのほうが売れやすい。買主が資金調達しやすいこと、収益性不動産として活用する場合は金利が低いときほど利回りが高く計算されることが影響するからだ。いずれにせよ、自社にとって最も良い売却タイミングを自社の事業の動向と照らし合わせて検討しなければならない。

3つ目として、「売却時にどんな準備をすれば良いのか」についてだが、「レントロールと修繕履歴」を作っておくことがポイントになる。この2つがそろっていると売却交渉がスムーズに進みやすい。レントロールとは「入居しているテナントの賃貸条件一覧」のことを指す。前述したように、テナントが入居している物件を売却する場合、オーナーチェンジという形で買主はテナントとの賃貸契約を引き継ぐことになる。その契約内容をまとめたレントロールの存在は買主にとって安心材料となり、また収益算出の重要な判断資料となる。
修繕履歴は、過去に行った修繕の記録だ。修繕を実施した箇所とその時期、内容、かかった費用をまとめたものだ。修繕計画を含めて、修繕履歴があれば、買主は購入後の修繕計画を把握しやすく、資金計画を立てやすい。このレントロールと修繕履歴がすぐに準備できるオーナーは少数派であり、買主にとってはすぐにこの資料が提示されることで信頼を増すケースが多い。

こういった書類の整理、準備は不動産取引になれた担当者でも時間がかかることもあり、難しい。購入を検討し始めた段階で、不動産会社に相談して整備したほうが良いだろう。

売却交渉、売却後の調整を進めるためのポイントとは?

前述のレントロール、修繕履歴に限らず、オフィスビルの売却時にはさまざまな資料が必要になる。土地建物の固定資産税および都市計画税の納税通知書、建物の保険料がわかるもの、管理料の金額がわかる資料、水道光熱費などがわかる資料、設備のメンテナンス費用などがわかる資料などは事前にそろえておきたい。これらの書類は、日常的に管理されていないケースがほとんどであり、売却を検討する際に準備することが多い。専門性が高い書類も多いため、専門家の知恵を借りたいところだ。

現在入居しているテナントへの通知だが、通常は売却が決定した後に通知する。その際には、オーナーチェンジのこと、契約内容は維持されることなどを適切に伝えなければならない。ここでポイントになるのは、テナントへの対応にとどまらず、預かっていた敷金の扱いだ。敷金は新たなオーナー、つまり買主に継承することになる。多くの場合は、売買代金に敷金の移転についても含めて交渉することが多い。

ここまで述べたことにとどまらず、事業用不動産の売却には、時間と手間、専門的な知識と経験が求められる。信頼できる不動産会社と時間をかけて、検討を進めていくべきだ。