注目される不動産デューデリジェンス そのポイントとは?

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不動産の価値を調べるケースは、案外多い。売買を検討しているときに限らず、不動産証券化やM&Aの流れの中で投資する不動産を吟味するときにも、多角的に「不動産の価値」は調査される。一般的には不動産鑑定などで調査されるが、「不動産デューデリジェンス」という他角度からの不動産調査も存在する。

デューデリジェンスとはなにか? どうして注目されている?

デューデリジェンスという言葉を聞いたことがない、あるいは聞いたことはあるがきちんとした意味を知らないという人もいるかも知れない。「デューデリジェンス(Due Delligence)」は、「Due=適正な」「Delligence=義務・努力・精査」の合成語で、あえて日本語訳するならば「適正になすべきこと/精査」となるだろうか。2000年頃から日本でも使われだしたが、その頃はM&Aにおける企業の調査、評価を指していた。買収する企業について、財務諸表にとどまらず、事業の将来性、市場での評価など、多角的にその“価値”を評価し、M&A対象としてふさわしいかを判断する重要な材料となっている。
それを不動産に適用したのが「不動産デューデリジェンス」だ。

アメリカでは、不動産取引の際に売主が詳細な不動産情報について、買主に情報公開(ディスクロージャー)することが義務付けられている。同時に買主は、独自に(自己負担で)詳細に不動産の情報を調べる権利を有している。これによって、売主が公開した情報が適正かどうかを判断することになる。

日本でも売主は重要事項説明などの情報公開義務を負っている。しかし、買主がそれを精査する手段は、限定的かもしれない。
そしてM&Aや不動産売買といった高額の取引の際には、デューデリジェンスは売主にはもちろん、買主にも必要なことだと言える。

不動産のデューデリジェンス その3つのポイント

不動産取引において、売主は重要事項説明の義務を負っている。しかし、買主はそこから得られる情報は限定的だ。売主と買主の間には「不動産に関する情報の不均衡」が生じてしまい、売主が有利な状況になりかねない。その差を埋める手段の一つが不動産デューデリジェンス」だ。この不動産デューデリジェンスは、大きく3つの要素からなっている。

不動産のデューデリジェンス その3つのポイント

「経済的側面」では、公示価格や基準地価、相続税路線価、固定資産税路線価の確認から、実勢価格の調査を行う。それにとどまらず、近隣の市場状況、今後の開発計画などを複合的に判断して、実勢価格の変動も予測する。住宅用の不動産であれば、周辺の物件の空室率や家賃相場も調査対象となる。

※不動産の評価については、下記記事も御覧ください。
『不動産の評価額』が知りたい! 不動産には5つの価格がある?

「物理的側面」では、建物の評価が中心となる。建物の築年数や実際の劣化度合い、建材としてアスベストやPCBが使用されていないか、その他有害物質の汚染がないかといった調査、土壌の汚染状況も調査される。
地震や水害などのリスクも評価対象となる。建物の劣化度合いから今後の修繕計画、そこで予想される費用なども算出され、評価対象となる。どのような部分に問題があるか当たりをつけるためにも本格的なデューデリジェンスの前に、簡易的な診断を実施しておくといいかもしれない※。

「法的側面」では、まず不動産の権利関係の確認が挙げられる。所有権の正当性の確認、境界の確認といった内容だ。境界の確認には、事前に簡易な測量を行っておくことでスムーズに測量を進めることができる※。 次に建築基準法上で既存不適格の建物になっていないかといった点や消防法の違反がないかといった建物自体の法的順守も調査される。

※仮測量、簡易建物診断などの不動産売買支援サービスはこちらからご確認いただけます。

その他に不動産の状況を正確に把握するためには

不動産デューデリジェンスの要素の一つに「エンジニアリングレポート(ER)」がある。前述の3つの評価側面のなかでも、物理的側面、特に「建物の評価」に特化したものだ。建物は建築された瞬間から劣化が始まる。その度合は一様ではなく、メンテナンス、利用状況で異なってくる。増改築もされることがあり、竣工時の図面と現況の建物が異なることも珍しくはない。建物本体(躯体)にとどまらず、電気・給排水・冷暖房・昇降機・消防設備など、それぞれの部分ごとに状態が異なるため、それぞれを調査し、評価しなければならない。
エンジニアリングレポートでは「順法性の調査」「劣化度の診断」「それに伴う修繕費の計画作成」が中心となる。さらに災害へのリスク診断、環境調査が含まれる場合もある。

このエンジニアリングレポートの作成には、建築士や不動産鑑定士、設備機器の専門家など、複数の専門家がチームを作って対応することになる。
2007年以降は、不動産証券化の流れもあり、不動産の経済性を評価する不動産鑑定においては、エンジニアリングレポートを参照することが望ましいとされている。
不動産投資を検討する、あるいは「REIT」での投資を検討する機会は今後増えていくと予想される。もちろん、一般的な不動産の売買においても、その「不動産の価値」を知ることは極めて重要だ。適正な投資額、売買額でなければ、その後の収益性に大きな影響を及ぼす。

また、最近では自然災害への関心も増している。風水害による被害も毎年のように発生しており、自治体が発行するハザードマップだけではなく、より詳細な地盤・自然災害のリスクも不動産価値に大きく影響する。こちらは目に見えるものではないのでよく調査を行う必要がある。

※地盤・自然災害リスク調査については、こちらからご確認いただけます。

従来から、不動産鑑定、重要事項説明などで、そういった情報は公開されてきたが、今後は一層、多角的で深い情報が求められるだろう。不動産デューデリジェンスの需要は高まることは間違いない。

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