入札(オークション)での不動産売買、そのポイントとは?

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一般的に「不動産入札」と聞くと競売という印象が強いかもしれない。しかし、実際には、一般的な不動産売買においても、「入札」は頻繁に行われている。特に企業が所有する不動産、事業用不動産では「入札」による売買のメリットも数多い。

不動産を“入札(オークション)”で売買する、そのメリットとは?

実際のところ、事業用不動産の売買には「入札」が頻繁に活用されている。その理由は、一般的な不動産取引である「相対取引」とは異なるメリットが「入札」にはあるからだ。

そのメリットの1つ目が「想定以上の価格で売却できる可能性がある」ということだ。相対取引の場合、売り出し価格に対して買い主が候補として現れ、そこから価格を含めた条件交渉が始まる。場合によっては価格の交渉となってしまい、売り出し価格以上の価格で売却することは難しい。一方で「入札」の場合、売り出し価格は決めるものの、それ以上の価格で落札される可能性も少なくない。売り主の想定以上の金額で落札されるケースもある。
2つ目のメリットが「キャンセルがほとんどない」ということだ。相対取引では、条件交渉で折り合わず、売買の商談が中途でキャンセルされることも珍しくない。そうなると新たな買い主を探し直すことになり、時間と手間がかかってしまうことになる。これが「入札」になると、条件を互いに合意した上で落札しているので、落札後のキャンセルが極めて少ない。
3つ目のメリットは、売却額の妥当性が客観的に示される点にある。企業が不動産を売却する場合、株主などのステークホルダーにその妥当性を示す必要があるが、「入札」の場合、売却額に客観性があるため、説明が容易となる。
4つ目のメリットが、時間だ。「入札」では広く落札者を公募することもできるので、買い主それぞれと個別に交渉する必要がない。相対取引の場合は、買い主一件ごとに交渉し、決裂したら次の買い主というように、一件ずつしか交渉できないが、入札ならば複数の買い主と同時に交渉しているに等しく、結果として短期間で売却できる可能性が高くなる。

不動産を入札で売却する場合の手順とは?

不動産を「入札」で売却する場合、その流れは概ね以下のようになる。

不動産入札の流れ

まず大切なことは、「幹事会社」の選定だ。不動産の「入札」については、特に幹事となる不動産会社の力量がポイントになる。多くの不動産入札を手掛けている会社に相談し、入札幹事会社になってもらわなければならない。幹事会社が決まれば、不動産の査定を行い、入札の詳細について提案を幹事会社から受け取ることになる。売却したい不動産の価値、市場動向などを鑑みて、売り出し価格の設定、入札を告知する買い主候補の選定など、提案について協議し、具体的な入札の実行となる。ここでも、正確な不動産価値の鑑定など、不動産会社の力量が問われる。
実際に「入札」が行われ、落札されると、売買契約に移ることになる。

不動産入札の注意点とは?

冒頭に紹介したように、メリットが多い「入札」だが、注意点も存在する。主な注意点は以下の4つだ。

  • 落札者の選定基準を明確にしておく必要がある
  • 売り出し価格の設定が難しい
  • 落札者が出ない可能性もある
  • 落札先が決まった後、売却をやめることはできない

まず、「入札」というと最高値で入札した買い主が落札するように思うが、実際には価格だけではなく「購入後の用途」「買い主の基礎情報」なども加味して総合的に落札者を決定することが多い。これを事前に決めておく必要がある。
次に「売り出し価格の設定」だ。この価格が相場に対して高すぎると入札者が少ない、あるいは出ない可能性がある。これが低すぎると適正な価格での売却ができなくなってしまう。これを避けるには、事前に不動産査定を実施するなど、適正な価格を把握しておく必要がある。また、適正価格を把握した上で敢えて売り出し価格を開示せずに入札を行うことで、適正価格にとらわれない高値を追求する方法もある。
3つ目に、落札者が出ない可能性があるという点だ。この問題については、事前の不動産査定、市場調査などでその可能性が高い場合、相対取引に切り替えるといった判断が求められる。そういった総合的判断が可能な幹事会社が望ましいということになる。
最後になるが、一旦入札を行い落札者が決定した場合、売り主の都合で売却を取りやめることは難しい。そのため、売却の意思を固めたうえで入札へと進んでほしい。この点は、入札を実行する前に理解しておく必要がある。

さらにもう一点あげるとすれば、「入札に適した不動産がある」ということだ。メリットも多い「入札」だが、向き不向きは存在する。一般的な住宅地や居住用のマンション一戸などはあまり入札には向かない。それよりも事業用不動産、大きな更地など、企業が所有している不動産こそ、「入札」に向いているとされている。もともと工場や倉庫、物流施設として活用されていた物件ならば、購入を希望する企業も多いだろう。また、住宅地やマンションは用途が限定されるが、大きな更地は企業にとって活用の幅が広い。そういった不動産は、相対取引よりも「入札」を活用すると、思わぬ入札企業が現れ、想定以上の金額で落札されるチャンスも大きくなる。

不動産入札で、不動産を購入したい場合には?

「入札」は、売却だけではなく、購入時にもメリットは大きい。購入においての条件があらかじめ明示されているということ、取引期間が比較的短いこと、落札すればその後、売り主の都合でキャンセルされることがないなどがあげられる。
ただし、入札に参加できるかどうかが課題となる。入札には、情報が公開されているオープン入札と非公開のクローズド入札があるが、どのような実施方法にせよ入札が行われるかどうかの情報は、幹事会社が握っている。日頃から、入札の幹事会社を多数担っているような不動産会社とつながりを持ち、オープン入札はもちろん、クローズド入札の入札対象者として選定されるようにアピールしておくといいだろう。

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