イマドキの『物流施設』とは?最新物流施設事情を知る!

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今、『物流施設』が進化している。例えば、アマゾンを始めとする大手通販企業の物流施設、ヤマト運輸などの運送業の物流施設などでは、最新のテクノロジーが活用されている。一昔前のいわゆる「倉庫」のイメージとは異なり、最新のオフィスビルやマンションと見間違えるような物流施設も珍しくない。そんな『物流施設』は、不動産の活用、投資の観点でも注目すべき対象となっている。

『物流施設』=「倉庫」という考え方は、もう古い!

『物流施設』と聞いて、まず頭に浮かぶのは「倉庫」だろう。しかも、それは薄暗くたくさんの荷物が積み上げられているようなイメージがあるのではないだろうか。実は、そういった倉庫は一昔前のものとなっている。例えば、たびたびテレビ番組などでも取り上げられている通販大手のアマゾンの物流施設は、その規模だけではなく、在庫管理の方法や注文後に素早く出荷するためのさまざまな工夫が凝らされている。運送大手のヤマト運輸では、羽田クロノゲート、厚木、関西、中部3ヶ所のゲートウェイと呼ばれる最新の物流施設を開設し、多様化する物流需要に対応している。

単なる倉庫からテクノロジーを駆使した『物流施設』への進化には、いくつかの理由がある。国土交通省のまとめ※1によると、「産業構造の変化」「物流施設に求められる役割の変化」「物流業務のアウトソーシングの増加」といった要因から、大型物流施設の需要が高まったとしている。

特に大きな影響を及ぼしたと思われるのが、EC(electronic commerce、電子商取引)を中心とした通販市場の拡大だ。かつて物流といえば、そのほとんどは「B to B」だった。メーカーから商社・卸へ、そして小売へモノを流していくため、大量にまとめて運ぶことが主流だったと言える。しかし、通販では物流も「B to C」となる。経済産業省の調査ではB to CのEC市場規模は、2010年度には約7兆8000億円だったが、2018年度には約18兆円まで増加している※2。B to Cの物流では多くの荷物をまとめて一ヶ所に送るのではなく、一つ一つの荷物を一人ひとりの顧客に届ける必要がある。それだけ細やかな在庫管理、入出庫管理が求められる。それに対応するために、最新の物流施設は、いわばハイテクセンターと化しているのだ。

もう一点、『物流施設』が進化した要因がある。それは、人材難だ。物流施設を明るく清潔な職場とすることで、働きやすい環境を作り、人材を確保する狙いがある。また、物流施設特有の広大な敷地と施設を生かして太陽光発電設備を持つなど、エコロジ―に配慮した施設も少なくない。

※1「物流不動産の隆盛の背景や理由」 国土交通省
※2「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」 国土交通省

なぜ、多くの企業は『物流施設』を賃貸で利用するようになったのか?

かつての物流施設は「保管型」と呼ばれる倉庫であり、メーカーや商社、倉庫業者が保有しているものが中心だった。ところが、1990年代後半から高機能設備の導入、流通加工スペースの確保等、保管以外の付加価値をつけた「配送型物流施設」と呼ばれる大型物流施設が増えていった。これは物流コストの削減やサプライチェーン効率化が求められるようになった影響が大きい。その後、自前で物流施設を持たず、3PL(サードパーティーロジスティクス)つまり物流専門業者が運用する物流施設を活用する企業が増えていった。そして、現在の物流施設をまるごと賃貸する「賃貸型物流施設」が普及することとなった。
この物流施設の賃貸が普及した理由は、いくつか挙げることができる。まず、財務状況を改善するために、物流施設という資産を保有したくないと考える企業が増えたこと。次に、道路事情や商環境の変化、物流需要の高度化に対応しやすくするために、賃貸の物流施設を活用するメリットが大きくなっていることだ。自前で物流施設を持っていると、環境の変化に対応しにくい。例えば、それまでの施設よりも条件が良い立地に物流施設を移したくても、売却することは容易ではない。さらに業態の変化に伴って物流施設が必要なくなる事もありえる。最新の設備を整えるにも手間とコストがかかる。そういったことを想定して、最初から物流施設を持たないという選択肢を取る企業も多い。

マルチテナント型物流施設とBTS物流施設とは?

今、多くの物流施設が“賃貸”で活用されるようになっている。企業にとっては、『物流施設』という資産を持つリスクを避け、専門の物流企業にアウトソーシングするメリットを重視しているといえる。そんな賃貸で活用される物流施設は、その形態から大きく2つに分類されている。

まず、「マルチテナント型」と呼ばれる形態だ。これは一つの物流施設を複数の企業が相乗りする形で活用する。比較的小規模なメーカーや通販企業が利用することが多く、自前では持つことが難しい最新の物流施設を賃貸で活用できる。事業の成長に応じて、物流施設の契約内容を見直すこともできるので、効率的な運用ができることもポイントになっている。

もう一つの形態は「BTS(Build To Suit)型」だ。これは、マルチテナント型と異なり、いわゆる一棟貸しになる。物流施設一つをまるごと一社に提供するため、その企業にあった内容に施設をカスタマイズできる。比較的、大手企業がそれまで自前で持っていた物流施設を処分し、アウトソーシングするというケースが多いようだ。既存の物流施設を活用するだけでなく、顧客企業の要望に応じて、立地の選定、取得、企画、建設、管理運用まで行うことも珍しくない。

『物流施設』で、不動産活用を考える

『物流施設』が急速に進化した要因の一つには、不動産投資市場の拡大も挙げられる。不動産証券化に関する制度の整備も進み、国内外の機関投資家だけでなく、一般の投資家にも不動産投資が浸透している。従来はマンションやオフィスビルなどへの不動産投資が中心だったが、テナントの定着率が高く、賃料収入も安定した物流施設への投資にも注目が集まっている。特に汎用性が高いマルチテナント型の物流施設への投資は人気が高い。『物流施設』を投資対象として考えるならば、その設備内容や立地など、専門的な視点で判断をしなければならない。

また、不動産を所有する企業や個人にとって、不動産の活用手段として『物流施設』を視野にいれることもあり得るだろう。マンションやオフィスビルとしては不人気になりそうな立地でも、高速道路のICに近い、幹線道路に近いなどの条件が揃えば、『物流施設』として活用することが可能だ。自社で物流施設を建設し賃貸してもいいし、『物流施設』を求める企業に売却するという手段もある。遊休地がある企業、かつては倉庫として使っていたが今では使われていない倉庫を持つ企業などは、『物流施設』として売却することを検討してもいいだろう。賃貸や売却に際しては、一般的な住宅用、オフィスビル用などの不動産取引とは異なるノウハウも求められるので、『物流施設』に詳しい不動産企業に相談したい。

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