『健康経営』がいま、話題に! 企業の成長を左右する健康経営とは?

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少子高齢化が進み、若年層の人口が減っているいま、企業の従業員も高齢化が進んでいる。そして年齢とともに、若い頃とは異なり、病気のリスクも高まるが、そのリスクは個人だけではなく、企業のリスクにもなっている。企業にとっては、従業員に長く健康に活躍してもらう必要がある。そこで、いま、注目されているのが『健康経営』だ。

※健康経営は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。

従業員が健康に働いていると、株価が上昇する?

少子高齢化が進み、社会的に年金、医療費の増大が大きな課題となっている。これは、企業にとっても切実な問題だ。医療費の増大は、企業が負担する健康保険料の負担増大につながる。「働いているのは、病気に縁遠い若い世代」という話は今では通じない。生産年齢人口が減少しており、企業で働く人の平均年齢はあがっている。労働力確保のために、定年の延長、定年後も再契約して働いてもらうという企業も少なくない。健康保険組合の財政悪化への対策のためにも、健康に従業員に働いてもらう環境づくりが大切なのだ。

そこで、いま注目されているのが『健康経営』だ。経産省は『健康経営』について「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」と定義している。また、「企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待される」としている。

例えば、複数の従業員が生活習慣病にかかり、休むことが多くなると、生産性に大きく影響する。そうならないために、会社として生活習慣病予防に取り組む。また、すでに生活習慣病にかかっている従業員も無理なく、長く働いてもらえる環境を整えることで、労働力を確保し、その経験やノウハウを生かしていくことができる。従業員が健康であること、病気であってもできる範囲で働ける環境があることは、企業の価値にも影響する。
長期にわたって、従業員の健康を経営課題として捉え、取り組んでいくことは、従業員の健康保持・増進、生産性の向上、企業イメージの向上等につながる。企業イメージ向上につながった例として、株価への影響が挙げられる。経済産業省と東京証券取引所は、2015年に「健康優良銘柄」として、22業種22社を選定、翌年にも「健康優良銘柄2016」として、25業種25社を選定している。ここで選定された企業は、TOPIXと比較して、優位に株価が推移しているという。

健康経営のメリットとは?

健康経営のメリットは、ただ、従業員が健康になることだけではない。従業員の健康を通じて、以下の4つのメリットがあげられている。「労働生産性の向上」「企業イメージの向上」「従業員の定着・離職率の低下」「医療費負担の減少」だ。

まず「労働生産性の向上」だが、2つの側面が考えられる。健康に働き続けるためには、適切な時間働き、適切に休む必要がある。長時間労働は避け、有給休暇も適切に消化することが望ましい。きちんと休んでいるからこそ、集中して、働くことができるのだといえる。これを実現するには、業務を効率化しなければならない。いわゆる働き方改革への取り組みが、そのまま「健康に働く環境づくり」になり、結果として、労働生産性の向上を実現できることになる。もう一つの側面は、従業員が健康ならば、急に病気で休むことも減る。病気による休職も減らすことができる。その結果として、労働生産性も向上するのだ。

次に「企業イメージの向上」がある。いま、多くの自治体で地元企業の健康経営への支援、補助金の制度だけでなく、自治体による認証制度もあり、例えば名刺や会社案内、ホームページなどにその旨を記載することができる。取引先にとっても、健康経営に取り組む企業と取引するほうが、印象はいいし、担当者が急に交代するといったリスクを避けることができる。そして、企業イメージの向上によって人材の採用活動も優位に進めることができるだろう。

3つ目の「従業員の定着、離職率の低下」だが、病気による離職を避けることができるうえに、健康経営への取り組みは社内環境の整備にも繋がり、職場、働き方は改善されることになる。その結果として、離職率が低下するのだ。最後の「医療費負担の減少」だが、従業員が健康を害し病院を受診した場合、企業にも医療費負担が生じるが、従業員が健康だと、当然ながら企業の健康組合保険の医療費負担は減少する。

「ストレスチェックの結果が悪い」「長期休職者が多い」「人材不足で労働時間が長くなりがち」「中高年の労働者が多い」といった項目に一つでも当てはまる企業ならば、積極的に取り組んだほうが、メリットが大きい。

健康経営に取り組むステップとは?

具体的に『健康経営』を実践していくのは、次のようなステップを踏むことが重要になる。

『健康経営』を実践していくステップ

まず重要なことは、「経営陣が健康経営の重要性を正しく認識する」ことだ。健康経営は、重要な経営課題であり、企業の存続に係る課題であることを経営陣が認識し、全社で取り組まなければならない。福利厚生の一貫と考えていると、社内に健康経営の理念は浸透しない。

次に「内外に宣言する」ことだ。これは経営陣が認識した健康経営の重要性を社内に共有することと同時に、社外にも知らせなければならない。これは「健康経営に取り組んでいます」という宣伝・広報ではなく、「健康経営に取り組むことで、社外とのビジネスの進め方に変化が出ること」を伝えなければならないからだ。これまで、少々無理がある納期を社員の頑張りで対応していたとしても、健康経営の始動後は取引先に対し、納期の相談をすることになるということもあり得る。

続いて「社内に組織を作る」ことだ。誰が主体性を持って取り組みを推進していくかということを明確にし、組織化することで権限を与える。適切な組織が整っていないと、いくら経営陣が声をかけても具体的な行動にはつながらない。組織ができたら、現状の把握と分析に移る。

そして、その分析結果に基づいて、具体的な取組内容を策定し、実行していくことになる。例えば運動不足の社員が多ければ、それを解消する施策が優先されるだろう。そもそも、従業員の健康状態が把握できていなければ、定期的にそれを把握する仕組みづくりが必要になる。

最後に、取り組みの効果を測定し、効果が薄ければ改善し、効果が出ていれば継続する。また、次の課題への新たな施策を考案するという、いわゆる「PDCAサイクル」を回していくことがポイントになる。

オフィス環境の改善も、健康経営に貢献する

健康経営への具体的な取り組みは様々だ。例えば、出勤時に必ず血圧測定をする。万歩計を支給して、毎日の歩数を報告する。一定の時間にストレッチや体操を促すといったことも立派な健康経営の取り組みだ。それらの取り組みの一つとして、「オフィス環境の整備」がある。

経済産業省でも、「健康経営オフィスレポート」を発表し、オフィス環境の整備を呼びかけている。「健康経営オフィスレポート」の2015年版によれば、健康経営オフィスとは「健康を保持・増進する行動を誘発することで、働く人の心身の調和と活力を図り、一人ひとりがパフォーマンスを最大限発揮できる場」としている。そのポイントは、「快適さを感じることができる」「コミュニケーションが取りやすい」「休憩・気分転換ができる」「体を動かせる」「適切に食行動が取れる」「清潔である」「健康意識を高める工夫がある」の7つある。

かつては、効率重視、コスト重視でオフィス環境は二の次という考えが多かった時代もあるが、現在はオフィス環境への投資が労働生産性に貢献することは広く認知されている。その背景には、健康に働くことができるという健康経営の考えもある。また、オフィス改革は従業員にとって非常にわかりやすい改革だ。経営陣の意志を浸透させ、健康経営を推進するには、オフィス改革は非常に重要なポイントになる。従業員の意見を聞き、現在のオフィスの課題を知ることから始めると一層、効果が高まるだろう。

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