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不動産経営で大切な「減価償却」とは?その仕組とおさえておきたいポイント

2019.12.17

不動産経営において欠かすことができない減価償却だが、その仕組みは決して簡単とは言えない。特に不動産は償却期間が長く、運用において減価償却は無視できない。しかし、不動産経営をしながらも、細かな経理については税理士などに任せっぱなしの方も多いのではないだろうか。ただし、「理解して任せている」ことと「わからないまま任せている」のでは、意味が違う。そこで今回は減価償却の仕組みやおさえておくべきポイントを解説した。ぜひ減価償却について理解し、税理士やプロフェッショナルのアドバイスをきちんと理解できるようになってほしい。

物の価値は、古くなると減っていく。減価償却の考え方

不動産や自動車、工場の機械、オフィス家具などは、時間の経過によって古くなり、価値が減衰する。このような「年を経るごとに価値が減衰していく資産」のことを「減価償却資産」と呼ぶ。減価償却資産は購入にかかった費用を一括して経費計上せずに、ものの種類ごとに定められた耐用年数に応じて、少しずつ経費計上ができることとなっている。例えば、自動車を購入した場合、その費用は、購入した年に購入にかかった費用の全額を経費計上できない。「毎年少しずつ、減衰していく価値の分だけ、経費にする」ことになる。
これが減価償却の基本的な考え方だ。ただし、減価償却の対象となるのは、基本的に取得価格が「10万円以上」の物品。10万円未満のものは対象外だ。
不動産には土地と建物があるが、土地は年を経るごとに価値が減衰することはないため、土地は減価償却資産には含まれず、建物だけが減価償却の対象となる。
不動産経営の健全化には経費の計算が欠かせないことは言うまでもない。特に大きな経費には「固定資産税」と「減価償却費」が挙げられるため、この2つを把握しておくことは、大変重要である。減価償却費は、毎年、現金で支払っているわけではないので、おざなりになることもある。仕組みが複雑なので、税理士任せということも多いだろう。しかし、きちんと計算をすることで、適正な確定申告を行うことができる。また、減価償却費用を正しく理解することで、節税につながるケースもある。

減価償却費の計算方法とは? 取得価格と耐用年数の仕組み

減価償却の計算には「取得価格」、「耐用年数」、「減価償却率」の3つが必要となる。
取得価格とは不動産(土地は除く)を取得した価格のことで、取得価格を元に耐用年数や減価償却率を掛けあわせて減価償却費が求められる。

取得価格はすぐに分かるので、2つ目の「耐用年数」から解説する。耐用年数は建物の構造と用途によって決まり、建物として使用に耐えられるであろう年数、価値がゼロになるまでの年数をおおよそ想定したものである。
一例を挙げると、住宅用鉄筋コンクリート(RC造)の耐用年数は47年とされている。また重量鉄骨は34年、木造は22年と定められている。ただしこれは用途によって異なる。
例えば飲食店用であれば鉄筋コンクリート造であっても、耐用年数は34年となる。減価償却費の計算において、耐用年数は非常に重要な数字のため、細かく調べる必要があるのだ。

3つ目の減価償却率は、耐用年数から算出する。通常、耐用年数は、国税庁が発表している「減価償却資産の償却率表」に記載された償却率に基づくことになる。一方、中古物件を購入した等の場合は、合理的な耐用年数の算出が難しい為、簡便法という計算式で耐用年数を求める。その場合は「中古物件の耐用年数=(法定耐用年数−経過年数)+経過年数×0.2」という計算式となる。
例えば住宅用鉄筋コンクリート造の建物で、築後10年が経過した建物があるとしよう。耐用年数は上記の式に当てはめると「耐用年数=(47−10)+10×0.2=39」と求められる。
耐用年数は単純に法定耐用年数から築後年数を引いたものではないことに留意して欲しい。
この計算式で、この物件の耐用年数が「39」と算出されたので、これを国税庁が公表している減価償却資産の償却率表に当てはめて、減価償却率を確かめることになる。上記物件の場合、後述の定額法の場合の償却率は0.026となる。
ただし、ここで一点、注意が必要になる。平成19年4月に法改正が行われたため、平成19年3月31日以前に建てられた建物と以降の建物では償却率が異なるのだ。それぞれの減価償却率表が公表されているので、自分の物件がどちらに当たるか注意してほしい。
以上の計算で、この物件の減価償却費は、耐用年数=39、償却率=0.026であり、「減価償却費=取得価格×0.026」であり、経費として計上できる。よって1億円の物件ならば、39年間毎年260万円が減価償却費として計上できる金額になる。

なお減価償却資産は「建物」だけであることに注意して欲しい。土地は減価償却資産に含まれないため、不動産取得価格のうち「建物価格」を明確にしないと減価償却費は計算できない。売買契約書に土地と建物の価格がそれぞれ明記されている場合は、これに従えばよい。以前は明記されてないこともあったが、現在は明確に分けて明記することが一般的になっている。

減価償却の償却率、定額法と定率法があるが…

減価償却の償却率には「定額法」と「定率法」の2種類があり、どちらの償却率を使うのか選ぶことができる。定額法、定率法にはそれぞれメリット・デメリットがある。償却率は基本的に「定額法」を用いるが、申告すれば「定率法」による償却率を選ぶことも可能だ。ただし、一部、定率法を選択できない償却資産がある。「建物」「建物の付属設備(エレベータやエスカレータなど)」「構築物(駐車場のアスファルトなど)」は、定額法しか選択できないことになっている。
ちなみに、平成19年3月31日以前に取得した不動産は、法改正される前の償却率で減価償却費を計算する。なお古い償却率は「旧定額法」、「旧定率法」と呼ぶ。

定額法は「減価償却費=取得金額×定額法の減価償却率」で求められ、減価償却期間(耐用年数)の間、一定額の減価償却を行う。よって年数が経過した物件でも償却額が変わらない。年数が経過した物件の収益率が落ちても、そのままの償却率で減価償却できる。また計算がしやすいため、償却費の計算がしやすいこともメリットだ。ただし、物件の収益率が落ちても償却費が変わらないため、減価償却費用の比率が高くなり、利回りの悪化につながることもあり得る。
定率法は、「減価償却費=前期末の帳簿価格(取得年は取得価格)×定率法の減価償却率」で求められるため、初期は取得価格から減価償却費を差し引いて求められる帳簿価格が高いことで償却額が高く、年数を経るごとに償却額が落ちていく。つまり減価償却費は年数を経るごとに減少していくこととなる。

減価償却はどんなときに使うのか?売却時にも大切になる

減価償却費の計算は、毎年の決算時の必要経費である。よって不動産経営をしている間は必ず計算しなければならない。そして減価償却費は不動産の売却や購入時にも計算が欠かせない。というのも、不動産を売却したときには譲渡所得が発生するが、この譲渡所得の計算には減価償却費が含まれるのだ。

譲渡所得は「収入金額-(取得費用+譲渡費用)+減価償却費」として計算される。
例として1,000万円で取得した物件を900万円で売却したとしよう。売却費用で100万円かかった場合、「900万円-(1,000万円+100万円)」となり、200万円の赤字である。しかし減価償却費が仮に300万円だった場合、「900万円-(1,000万円+100万円)+300万円」という計算により、100万円の黒字になり、この100万円の利益に税金がかかることとなる。

このように、売却時には減価償却費が税金の額を左右する。そして物件購入した場合でも当然影響があり、購入後の経費計算、キャッシュフローのシミュレーションには、減価償却費の計算が欠かせない。

不動産経営において、減価償却の計算や理解は必ず必要となるが、決して簡単なものではない。そのため減価償却について、税理士や不動産会社に計算やシミュレーションを任せっぱなしになるケースが多い。
今回の記事でも、減価償却の大まかなあらましを説明したに過ぎない。物件や条件によって、減価償却費の計算は変ってくる。難解な減価償却の仕組みだが、ある程度理解した上で、プロである税理士や不動産会社のアドバイスを受けるべきだろう。

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