• スペシャリストの智
  • リアルな現場
  • The Watch
  • OFFICE JOURNAL
  • 不動産の税金ガイドブック
  • 鑑定士の視点
  • 空室率レポート

蘇った東京駅のシンボル。東京駅丸の内駅舎

三菱一号館美術館のある[一号館広場]から伸びる丸の内仲通りには[丸の内ストリートギャラリー]としてパブリックアートが点在しており、出光美術館や第一生命ギャラリー、GOOD DESIGN STOREといったアートやデザインに関わる場所も多いアートエリアとなっている。

丸の内仲通りを北へ進むと、東京駅丸の内駅舎が目の前にあらわれる。日本の表玄関として、首都圏のみならず日本の大動脈を束ねる東京駅。赤れんが駅舎として親しまれる丸の内駅舎は、ジョサイア・コンドルの弟子のひとり、建築家・辰野金吾(たつの きんご、1854年~1919年)によって設計され、1914(大正3)年に完成した。


創建時(大正3年)の東京駅の模型。2F回廊に設置された「東京駅丸の内駅舎の歴史を紹介する常設展示」より

1923(大正12)年の関東大震災にも耐えた東京駅駅舎だったが、1945(昭和20)年の東京大空襲により、鉄骨造の屋根が焼け落ち、ほとんどの内装を失う大きな被害を受けた。終戦後、1947(昭和22)年にかけて修復工事を行い、中央ドームは木造で丸型に修復されたが、南北のドームは台形に変更され、仮の姿として長い年月が流れた。

長く仮の姿のままでしたが、2000(平成12)年に創建当初の形に復原する方針がまとまり、2007(平成19)年に着工、6年に及ぶ工事を経て2012(平成24)年に、創建当時の美しい姿への[保存復原]が完了した。復原工事の覆いが外れて美しいレンガの外壁と、当初の形の優美な丸型ドームが蘇ったときには、日本中が感嘆した。

*復元と復原
「元の状態・位置に戻すこと」を意味するこの2つの言葉は、一般的には区別されないが、建築分野においては、「復元」は解体などで失われたものを、かつての姿どおりに新たに作ることをいい、「復原」とは当初の姿から改変されてしまった現状を元の姿に戻すことをいう。一度、解体されたものを新たに作った三菱一号館は「復元」であり、一部が破壊され、別の形で修復されていたものを元の姿に戻した東京駅は「復原」というわけだ。


東京ステーションギャラリーのエントランス。壁には東京駅創建当時の煉瓦壁がそのまま使われている

駅の美術館。東京ステーションギャラリー

おなじみのこの駅舎にもまた美術館がある。『東京ステーションギャラリー』は1988(昭和63)年、“駅を単なる通過点ではなく、香り高い文化の場として提供したい” という願いを込めて、東京駅丸の内駅舎内に開館した。東京駅の歴史を象徴する煉瓦壁の展示室をもつ美術館として親しまれ、開館以来18年間、さまざまなジャンルの展覧会を開催してきた。2006(平成18)年より東京駅の復原工事に伴い一時休館、2012年秋、丸型ドームに復原された北ドーム側にリニューアルオープンし、現在も意欲的な企画展を中心に美術館活動を続けている。

リニューアル後のステーションギャラリーの特徴は、1914年の創建当時の姿を可能な限り活かした構成にある。美術館のエントランスは丸の内北口改札の間近にあり、文字通り、駅にもっとも近い美術館といえる。「エントランスの壁には煉瓦壁がそのまま使われていて、私はいつも不思議の国のアリスのように“駅舎の内側にすり抜けていく” ような、不思議な気分にとらわれます」と高野さんはいう。


東京ステーションギャラリーの2F展示室。黒く見える部分は、ネジや釘を受ける素材として使われた木煉瓦。1945年5月25日の空襲で焼け、炭化したもの

館内の煉瓦壁(構造煉瓦、化粧煉瓦)は、東京駅丸の内駅舎の一部をそのまま使用しており、重要文化財に指定されているものだ。3階展示室は変形のホワイトキューブのような空間となっているが、2階展示室は壁面を煉瓦が彩っている。

白っぽく見える部分は、もともと煉瓦の上に漆喰が塗られていた場所で、展示室の壁については、洗浄して漆喰を取り除いてあるが、それ以外の壁については一部残されている。また、ところどころに黒く見える部分は、ネジや釘を受ける素材として使われた木煉瓦だが、1945年5月25日の空襲で焼け、炭化したもの。美術館そのものが歴史の証人であり、強いメッセージ性を孕んだアートといえる。

東京ステーションギャラリーの展覧会のテーマは古美術から現代美術までと多彩だ。2014年12月には、東京駅の開業100周年を記念して開催された『東京駅 100年の記憶』が開催された。近代建築史や絵画、写真、文学など、さまざまな視点から1世紀にわたる東京駅の記憶に光を当て、その文化的な意義を再検証したものだった。

回廊から臨む、東京駅の歴史

展覧会を見終え、順路に沿って進むとドーム部分の回廊へと続いている。この回廊からは丸の内北口改札を見下ろすことができ、東京ステーションギャラリーのエントランスを上から眺めることができる。この回廊には、東京駅丸の内駅舎の歴史を紹介する常設展示があり、創建時の東京駅の模型をはじめ、東京駅創建の明治から現代に至る丸の内の歴史ジオラマは必見だ。

明治になって武家屋敷が取り壊された丸の内は、陸軍の官舎や練兵場となり、東京駅創建当時には東京駅と[一丁倫敦]以外はまさに野っ原だった。その後、[一丁倫敦]に対し、アメリカ式の鉄筋コンクリート造の近代的なビル群は[一丁紐育]と呼ばれ、現代の高層ビル群に変化していく100年の歴史は、立体模型で見るとより胸に迫ってくる。


丸の内の歴史が東京駅創建時から現代に至る歴史ジオラマの展示。写真は奥に創建時の東京駅、手前に三菱一号館を中心とした一丁倫敦と呼ばれた区域がみえる。「東京駅丸の内駅舎の歴史を紹介する常設展示」より

東京ステーションギャラリーの中でも特に印象に残るのは、改札のある八角形のドーム部分2階にある回廊だ。見上げれば、八角形のドームのクリームイエローの天井には、鷲や、美しい干支のレリーフといった装飾の数々、下には丸の内北口改札を利用する人びとの往来を臨むことができる。

スーツケースを抱え足早に消えていくビジネスマン、談笑するご婦人たち、大きなトランクを運ぶ旅行者。そこはたしかに東京駅。関東大震災や原敬首相の暗殺、東京大空襲といった歴史の舞台として、激動の時代をくぐりぬけてきた、忘れえぬ場所なのだ。

この回廊は、改札を行き交ういまこの時に、たくさんの人々とドラマが生まれているはずの現実をのぞくことができる特別な場所。ひとり見下ろしながら、100年の歴史に思いを馳せて佇む美術館の回廊だ。『駅の美術館』だからこそ味わえるこの空間は、私たちに不思議な感動と、深い思索の時を与えてくれる。


東京ステーションギャラリーの2F回廊より丸の内北口改札に面した東京ステーションギャラリーのエントランスを望む


ミュージアムショップのTRAINIART(トレニアート)。駅の美術館ならではの鉄道にちなんだグッズが楽しい