
- 前田
- たしかに、会計や経理の部署にとっては、資産が一元的に管理されることで減価償却処理や決算書類の作成はやりやすくなるし、経営にとっても資産の「見える化」が進むのはよいことですが、一つひとつの物件の状態を記帳するのは現場ですからね。現場にとってもメリットがないとモチベーションは高まりませんものね。
- 長谷川
- 「プラチナ」では機能の一つとして償却計算機能を提供したこともあるのですが、管理手法が経理や会計目線にあまりにも寄りすぎてしまうと、現場部門の管理ニーズとの齟齬が生じてしまいます。決算のためと言われても、現場にとっては遠い話ですからね。そうではなく、資産データを管理することは、現場の業務をよりスムーズにするためにも不可欠なことですし、システムは現場にも役立つものだという位置づけを理解していただくことが重要でした。
実際、「プラチナ」を導入することで、生産終了後も一定年限の保管を義務づけられている金型について、所在や稼働状況の管理業務がスムーズになったという製造業のお客様がいらっしゃいます。また、工場が水災に合われた際、システムに資産台帳のデータを整備されていたことから、損害保険の請求がスムーズに行えたという報告も伺っています。
- 前田
- 実は「CRE@M」も、2011年の東日本大震災をきっかけに導入を検討されるお客様が増えたということがあります。万一、事故や災害が発生した場合でも、資産管理さえしっかりしていれば迅速な復旧が可能です。まさにBCP的な観点からも、両者の資産管理システムは有効であると思いますね。
ところで、「プラチナ」導入による資産管理コストの低減ということでは、何か数字をお持ちですか。
- 長谷川
- これはお客様、特に経営層の方々にもよく聞かれることです。ただ、私たちはこのシステムを必ずしもコスト削減のためだけのツールとは位置づけていないのです。実際、このシステムで機械のメンテナンスの過不足状況がわかったとしても、それが管理コストにどう反映しているのかは数字的にはわかりにくい。ですから、コスト削減には役立つけれども、より重要なのは管理業務に関する満足度の向上だと、私たちは考えています。資産管理の「見える化」によって、資産を動的に管理する意識を高めることが、経営的には大切ではないか、という考えに至りました。
- 前田
- そのお考えは私どもの「CRE@M」でも全く同じです。不動産の状況をたえず「見える化」しておくことではじめて、積極的なCRE戦略が講じられると考えています。
- 長谷川
- 管理の最適化・効率化というのはどこかでトップダウンでやらなければならないものです。しかし、実際に資産がどう管理されているかというデータの整備や、全体の把握がされていないまま全社を一元管理しようとすると、現場が困ってしまいます。経営にとっても現場にとってもこのシステムを使って「見える化」を進めることが大切なのです。
- 前田
- 「プラチナ」はたえずバージョンアップを続けられているようですが、資産管理ツールは、テクノロジーの進歩を取り入れることで、これからはどんな形に変わっていくとお考えですか。
- 長谷川
- 例えば一つひとつの物件にQRコードを貼り付け、それをスマートフォンで読み取ることで物件がどの製造ラインで使われ、どの倉庫に保管されているのかがすぐにわかるような機能があります。将来的には送信機能をもつ小さなICチップを物件につけることで、自動的に位置情報が把握できるというような技術も不可能ではないと考えています。
- 前田
- なるほど物理的に紛失してしまう可能性がある動産を管理するうえでは必要な技術であり、優れた発想だと思います。
-
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