賃貸マンションの価値を向上するためには~物件のポジショニングを踏まえた施策
目次
物の老朽化により経営している賃貸マンションの稼働率が低下したとき、多くのオーナーは「どのような対策を講じることで改善できるか?」という問題に直面します。
一棟マンションの賃貸経営において、建物や設備の老朽化が進むと稼働率の低下が懸念されます。それに伴う不動産価値の低下は、オーナーにとって深刻な悩みの種です。
今回は「競争力が低下した場合、まず考えるべきことは何か」「建物や設備の老朽化に対しどのような対策を講じるべきか」と悩んでいるオーナーに向けて、効果的な施策内容を紹介していきます。
マンション経営にあたり空室が増え収支が悪化する原因とは?
一棟マンション経営において、収支が悪化し、不動産の価値が低下する原因は、マーケット環境の変化と、建物の老朽化や陳腐化による建物価値の低下等が考えられます。
例えば、設定賃料が周辺相場より高い等の理由でリーシングが進まず、稼働率が上がらないケースがあります。また築古物件は一般的に新築物件よりも競争力が劣るため、近隣に募集中の築浅物件があると稼働率が上がりにくくなります。周辺で部屋を探している方のニーズと、供給されている部屋のタイプがマッチしてない場合もあります。
また別の例を挙げると、建物・設備の老朽化等で物件が陳腐化してしまうことで解約が発生したり、リーシングが上手くいかず、稼働率低下につながるケースもあります。
次の項目からは、建物・設備の老朽化の場合と、近隣に対象物件よりも魅力的な物件が建築された場合をピックアップして詳しく見ていきます。
建物・設備の老朽化
建物が古くなるとリーシングを行っても入居者が見つからず、稼働率が上がらないケースがあります。人気がなくなる原因は、経年による見栄えの劣化や付帯設備の性能低下を不安視する入居者が多いためです。
マンションは維持管理の問題も発生しやすく、なかには共用部分のエントランスやエレベーター等の設備が経年により細かな汚損が目立つことで、マンション全体が暗く維持管理が行き届いていない印象を与えてしまうケースもあります。
また、建物管理における遵法性の確保は当然の義務として果たすことはもとより、予防修繕や日頃の管理方針を定めておくことが重要です。LCC※の観点からも所有不動産を長く維持するためには、日ごろからのこまめな定期点検や修繕を行い、突発的かつ多額な修繕の可能性の芽をつんでおくなど、管理の意識をもって賃貸経営に取り組む必要があります。
※LCC(ライフサイクルコスト)とは計画・設計・施工から、その建物の維持管理、最終的な解体処分までに要する費用の総額のことを指します。
建物に求められる機能・性能(スペック)は年数が経過するごとに上昇し、一方で建物それ自体は徐々に劣化していきます。そのため築年数が経つごとに建物の価値は下がっていきますが、建物価値の維持・向上のための対策を講じていく必要があります。
近隣に所有物件より魅力的な物件が建築された
競合となる物件が近隣や駅近の立地に新築された場合も、賃料相場が変化して収支や稼働率に影響を受ける可能性があります。新築競合物件には最新の機能・設備が備わっていて、多くの人が魅力を感じやすいです。
新築競合物件との比較では、築古物件の建物・設備の陳腐化が目立つ可能性があります。
陳腐化とは、製品や設備が時代遅れになったり効率が悪くなったりしたため、顧客から選ばれにくくなる状態を指します。特に、キッチン・浴室・洗面・トイレ等の水回りでの陳腐化はリーシングの不調に直結しやすいです。
例えば、時流に沿った設備やサービスが導入されていないため、築古物件の競争力が維持できていない原因になっているケースもあります。新型コロナウイルス感染拡大以降、宅配ボックスの需要が拡大し、現在では宅配ボックスを完備していないマンションは、設備不足とみなされる場合があります。
物件の価値を高めるために必要な施策|リフォームやリノベーション以外に必要なことは?
空室が増えて収支が悪化する原因に、根本的に対応するためには、物件の入れ替えや建物の建て替え、大規模なリニューアル等が主な選択肢として考えられます。しかし物件オーナーによっては資金的負担や手間がかかり、また時間的負担が大きくなってしまうため、すぐに取りかかるにはハードルが高いでしょう。
一方で劇的な改善を見込むものではありませんが、低額予算で対応可能な修繕に絞る等、最低限の取り組みで賃貸経営を徐々に改善していくという選択肢もあります。現建物の継続運用を前提にテナントの満足度を高める工夫として、軽微な修繕や意匠・デザインの変更をすることでイメージアップにつなげる取り組みや、収支の見直しの観点から契約内容や運営方法を見直すことも有効となります。
次の項目からは、具体的にはどんな施策が可能か解説していきます。
周辺賃料相場や賃貸マーケットの分析
1つ目は、周辺の賃料相場や賃貸マーケットを定量的・定性的に分析する施策です。まずは狙うべきターゲットを絞りペルソナを設定します。
次にSWOT分析※等を行い、マーケット環境の理解や所有物件の強みを明らかにしたうえで、顧客への訴求ポイントを明確にしていきます。分析の過程では競合物件についても詳しく調査してくことが欠かせません。
競合物件を分析する際には、賃貸条件を見直すため等、分析の目的を明確にするのがおすすめです。マイルストーンが設定しやすくなり、流れが分かりやすくなります。
※事業の状況等を、強み(Strengths)、弱み(Weaknesses)、機会(Opportunities)、脅威(Threats)の4つの項目で整理して、分析する方法
調査結果に基づいてリーシング計画・修繕計画を策定する
所有物件の調査を行い、建物の状態を適切に把握することも必要となります。調査結果に基づき、今後の賃貸条件を含めたリーシング計画・修繕計画を策定できます。物件のおかれている状況を物理的、資金的に把握するためには、下記のような事項を一つ一つ検討・確認していくことが大切です。
- 当該物件の部屋タイプごとのターゲット顧客
- ターゲット顧客ごとのマーケット規模・賃料相場と賃料動向
- 競合物件の賃料とその動向
- 当該物件の募集条件、募集条件に適切に対応した設備か
- 物件で生じるコストの洗い出し
物件調査や収益検証等を行う中でとりわけ重要性が高いのが、次に紹介する「コストをおさえた施策」です。
コストをおさえた施策を検討する
オーナーとして予算的制限がある場合、現実的に対応可能なテナントの満足度を高める工夫として「コストをおさえた施策や差別化」が重要となります。
主に以下のような方法が考えられます。
物件のイメージアップや差別化につながる施策
- マーケットにマッチした募集条件になっているか(適正賃料、敷金、礼金、フリーレント等)
- 客付けのための仲介会社との営業連携やweb戦略
- 年季を感じさせるデザインの見直し(建具やフローリング等カラーバリエーション対応)
- 共用部のイメージアップにつながる工夫(清掃の頻度、植栽計画、インテリアの設置等)
- テレワークに対応したインフラ設備の拡充(ライフスタイルに合った間取りプランやインターネット環境の整備)
では実際に自身の物件で打ち手を検討する場合の優先順位をどのように考えていけばよいのでしょうか。
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保有している物件に対して、どのような施策が必要になるのかをオーナー自身が判断するのは難しく、具体的なアクションの優先順位を決めかねる方も多いでしょう。
そのため専門的な知識をもつ不動産会社にアドバイスをもらうことをおすすめします。
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