経営戦略から考える「WELL認証」とは?

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サステナブルな社会が推進される現在、企業においてもワークライフバランスやウェルビーイングに重点を置いた取り組みが注目されています。その1つが、人が心身ともに健康に過ごせる空間かどうかを評価するシステム“WELL Building Standard™”「WELL認証」です。名称は聞いたことはあるが詳細は知らないという方も多いのではないでしょうか。今回はWELL認証取得のメリットやWELL認証・評価の種類などについても紹介します。

WELL認証とは

WELL認証は、2014年にアメリカで始まった認証制度で、ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的な幸福度)の建物環境にフォーカスした国際的なビル評価指標です。 WELL認証は、働く場の環境を世界共通の評指標で認証しており、オフィスなどの環境が快適であるか、健やかに過ごせるかなどを評価します。
日本ではまだ広く浸透していませんが、世界的にはすでに重要視されている制度です。健康経営や働き方改革等を目指す企業では、その目指すべき方向性や達成度をグローバルな指標で評価されることから、わが国でも大きな関心が集まり、認証取得件数は年々増加しています。

WELL認証を取得するメリットとは

WELL認証を取得すると、様々なメリットが得られます。これから認証取得に向けた取り組みを検討している方は、どのようなメリットがあるかを把握しておくと、取り組み方にも反映できるでしょう。続いては、WELL認証を取得するメリットを3つご紹介します。

人材確保・エンゲージメント向上

近年は価値観の多様化により、求められるオフィス環境も変化しています。また少子高齢化や若年層の人口減少にともない、日本をはじめとする先進国では慢性的な人材不足に悩まされています。こうした背景から報酬面の優遇だけでは、優秀な人材が確保しにくく、各企業では人材確保が課題として挙げられています。
働き方の多様化に伴い、従業員だけでなく、求職者にも、自分らしく健やかに働けるオフィス空間を求めている方が増えています。そこでWELL認証を取得することで、求職者に対してもアピールできるでしょう。また健康経営の推進に繋がる取り組みを行うことで、従業員のエンゲージメント向上にも繋がります。

知的生産性の向上

従業員のエンゲージメントが高まることで、生産性の向上やモチベーションのアップなど事業の成長にも繋がるともいえます。
またWELL認証取得に向けて健康的なオフィスを構築するには、様々な工夫を凝らすポイントがあります。例えば、オフィス内に運動スペースを設けたり、体力を回復する休憩場所を導入したりするなどです。定期的に身体を動かす習慣をもつことは脳の機能向上に繋がるといわれていますので、知的生産性の向上にも繋がるといえるでしょう。

ブランディング

近年、SDGsやESG経営が注目されるようになったことで、オフィス環境においても人や環境に対する配慮が重要視されています。特にSDGsにおいては、開発目標である2030年に向けて取り組みを行う企業が増えています。WELL認証を取得すると、環境に配慮した社会への取り組みについて対外的に伝えられます。環境への配慮や従業員の健康を重視していることが伝われば、ブランディングにも繋がるでしょう。また感染症対策が施されていることを評価する要素もあるため、新型コロナウイルス感染症をはじめとした、感染対策を視野に入れた認証制度ともいえます。

WELL認証・評価の種類

WELL認証・評価の種類は多岐に亘ります。主な種類として挙げられるのが、以下でご紹介する4つです。ここでは、オフィス戦略に関連性があるWELL Building Standard v2とWELL Health-Safety Ratingに着目し紹介します。

WELL Building Standard v2(WELL v2)人々の健康に配慮した建築や街区の環境の性能を評価
WELL Health-Safety Rating感染症やその他の緊急事態における取り組みを評価
WELL at scale企業や組織が有する複数の建物や空間を評価
WELL Community Standard町や地域規模で評価

WELL Building Standard v2(WELL v2)

WELL Building Standardは、2014年にスタートしました。2018年のWELL Building Standard v2pilotを経て、現在の最新版は、2020年9月15日に発表されたWELL Building Standard v2(WELL v2)です。建物を通じて人の健康をサポートし、向上させるための10のコンセプト(空気、水、食物、光、運動、温熱快適性、音、材料、こころ、コミュニティ)で構成されています。
WELL認証を取得するためには全ての項目において、必要な点数を得なければなりません。また点数が高いほど認証レベルが高くなり、最も高いレベルがプラチナ、以下、ゴールド、シルバー、ブロンズと続きます。

WELLプロジェクト
WELL Core プロジェクト

また、WELL認証には3年間の有効期限があり、継続するためには再度、認証の取得が必要です。なおテナントビルの共有部分を対象とした認証は「WELL Core」と呼ばれます。評価システム自体は同じですが、テナントビルの特性を考慮した項目が付加されます。

※ビルオーナー側で(建物本体が)WELL Core認証基準を満たす場合、当然Core部分(共用部分)も認証されるので、テナント企業側でWELL認証を取得する際には(共用部分の評価について)一部審査が免除されます。

WELL Health-Safety Rating

WELL Health-Safety Ratingは、2020年6月から始まった評価です。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に代表される感染症やその他の緊急事態に対する、様々な取り組みを行っていることを示す第三者評価です。戸建て住宅以外のあらゆる施設が対象となります。建物のハードよりも運用やマネジメントを主に評価しており、WELL認証と異なり、現地検証がなく、提出書類のみで審査される評価です。全部で27項目の内、15項目以上を満たすと評価されたことを示すシールが得られ、建物出入口等に貼って示すことができます。評価開始以来急速に普及が進み、世界中で23,527件、日本では80件のプロジェクトが評価を取得(認定)しています。(2022/8/29現在)

WELL認証の評価項目

前述の通り、WELL v2には「空気」「水」「食物」「光」「運動」「温熱快適性」「音」「材料」「こころ」「コミュニティ」からなる10の評価項目が設けられています。評価コンセプトごとの加点によって認証レベルが決められ、点数が高いほど認証レベルが高くなる仕組みです。

なお、上記の評価項目の他に、イノベーション(奨励項目)があります。こちらは、10のコンセプトの得点とは別に、最高10点が加点されます。

WELL認証取得の流れ

続いては、WELL認証を取得するまでの流れを解説します。

実現可能性の検証

登録前に、認証取得を希望する物件が要件を満たしているかどうか実現可能性を検証します。必須項目を全て満たしているか、また目標とする認定レベル達成のために社内規定の変更が必要かなどを検討します。

プロジェクト登録・書類作成

Webサイト「WELL online」でプロジェクトの概要を登録します。登録後は担当者がつくため、進め方やプロジェクトの概要について確認をしましょう。その後、審査書類を英文で作成します。

書類審査

書類提出の5週間後に初回の審査結果が届きます。指摘があれば、書類を修正し再提出します。最終書類審査の結果が届いたタイミングで、書類審査での獲得点が判明します。

現地審査

現地審査は通常3~4日程度で行い、結果が約9週間後に届きます。必須項目に満たない箇所や修正が必要と判断されると、測定やデータの提出を求められ、最終的な確定にはさらに数週間を要します。全ての調査・審査が終わり、評価項目をクリアすると、数か月後に認証されます。

WELL認証取得後の運用

WELL認証には、有効期限が設けられており、3年ごとに再度の認証取得を受けなければなりません。また認証取得後も年に一度、運用時の状況を記録し、アンケート調査をまとめた結果報告を提出する必要があります。WELL認証は健康や快適性の維持を目的とした認証システムであり、継続して再認証を受けながら、しっかりと運用していくことが大切です。

ウェルビーイングの追求は企業価値の向上に繋がる

企業において従業員が健やかに過ごせるウェルビーイングに配慮した環境は、非常に大切なポイントの1つです。WELL認証の取得を目指し、オフィス環境を整備する取り組みは、従業員のモチベーション向上や企業価値の向上にも繋がります。

※WELL認証取得については、取得のサポートをする専門家に相談しましょう。

また、2016年に国土交通省により「グリーンリース」に関するガイドが公表されました。グリーンリースとは、オフィスとテナントが双方で負担しながら、環境に配慮したオフィスビルを運用するために、自主的に取り決めを行うことです。例えば、照明や空調によって消費されるエネルギーやCO2排出量を削減する取り組みを行う他、節水や廃棄物の適切な分別回収などが挙げられます。環境に配慮した取り組みを始める際は、費用がかかる一方、テナント側の満足度が向上し、ビルオーナーにとっても不動産価値の向上に繋がります。
グリーンリース(国土交通省)

企業戦略としての健康への取り組みは欠かせないものとなり、ポストコロナ時代に移行しつつある現在では、その傾向が顕著に表れています。オフィスの見直しを行うことで、従業員の健康配慮や企業の価値向上にも繋がります。健康経営に向けて、まずはオフィスから見直してみませんか。オフィス戦略の見直しを検討しているご担当者様は、ぜひ下記のページよりお問い合わせください。

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