不動産M&Aセミナーレポート

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目次

深刻化する中小企業における事業承継問題。企業価値を活かした事業承継の手段として、M&Aが注目されています。会社を売却する場合、資産比率の大部分を占めるケースが多い不動産の取り扱いについては重要なテーマです。今回のセミナーではM&Aと不動産戦略を一体のものとして考え、デューデリジェンスの際に不動産の価値を適正に評価することで企業価値にも大きな影響を与えられるという考えが示されました。Part-1、Part-2ではセミナーの内容を抜粋し紹介します。

PART1 M&Aの現在と不動産会社がサポートする理由

三菱地所リアルエステートサービス株式会社

アドバイザリー部 M&A課長

野田健介

三菱地所リアルエステートサービス株式会社

アドバイザリー部 三課長

杉山天康

M&Aによる会社の売却を視野に入れ、なおかつ不動産を保有している中小企業にとって、自社の企業価値を算出するには専門的な知識と経験が必要です。本セミナーでは、当社アドバイザリー部の野田健介と杉山天康が「M&Aの現在と不動産会社がサポートする理由」をテーマに不動産を活かすM&A手法を解説しました。

「M&A」が事業承継の選択肢に

中小企業経営者の高齢化は確実に進んでいます。2025年における経営者の年齢予測を見ると、70歳を超える経営者は約245万人にも達しますが、その約半数が後継者未定という状況です。事業承継がスムーズに進まなければ廃業も選択肢に入れざるをえません。実際、中小企業の休廃業件数は2014年から緩やかな右肩上がりで増加しています。「問題は約6割が黒字にもかかわらず休廃業をしていること。事業承継がうまくいかず、黒字であるにもかかわらず廃業となれば、それは日本の雇用やGDPの損失に直結します。事業承継問題はまさに日本経済が直面する喫緊の課題です」(野田)
事業承継には大きく「親族内承継」と「親族外承継」がありますが、近年は「親族外」も増えています。親族外承継の一つとして注目されるのが「M&A」による事業承継です。
ひと昔前までは、M&Aというと国内の大手企業間や国内外企業間の合併・買収が主で、中小企業にとっては必ずしも身近なものではありませんでした。しかし近年は中小企業でもM&Aに取り組む例が増えています。その数は2019年に4,000件を超え、今後、さらに活発化すると予想されています(下図参照)。M&Aの裾野は確実に広がっており、中小企業の事業承継の選択肢として身近な存在になりつつあるのです。
中小企業経営者がM&Aを実施する際に重視する項目として「従業員の雇用の維持」が筆頭に挙げられています。「いかに従業員の雇用を守るかはM&Aを成功させる上で重要なポイントですが、調査会社の調べでは約8割以上のケースにおいてM&A実行後も従業員の雇用は完全に維持されているという結果が示されており、M&Aは事業承継問題の解決策として有効な手段になるでしょう」(野田)

※出所:中小企業庁中小企業・小規模事業者における M&A の現状と課題
資料:平成 28 年度総務省「個人企業経済調査」、平成 28 年度㈱帝国データバンクの企業概要ファイルから推計

M&A件数の推移

出所:中小企業白書2022 資料:(株)レコフデータ調べ

M&Aと不動産戦略をトータルにサポート

不動産会社である三菱地所リアルエステートサービスがなぜM&Aサービスを展開しているのでしょうか。「効果的なM&Aを進めるにあたっては、不動産戦略が欠かせないという視点から、当社はこれまで培ってきた不動産サービスの知識・経験を活用したM&Aサービスを提供することで企業の課題解決のサポートをしています。案件ごとにプロジェクトチームを組み、相談からクロージングまで、不動産戦略とM&A戦略のどちらもトータルでサポートできる点が特徴です」(杉山)
一般的なM&A仲介業者では不動産の評価を行う場合、土地は路線価、建物は簿価等でざっくりと算出するケースが多いといわれます。一方三菱地所リアルエステートサービスでは、不動産サービスを提供する企業として、適正な不動産評価により適正な企業価値を導き出すノウハウを持っています。案件ごとに原価法、収益還元法、開発法、開発収益法など多様な評価方法を駆使し、とりわけ不動産M&A案件では、時価の純資産に着目した「時価純資産法」を重視しています。
「M&Aに直面して、株式譲渡をすべきか、事業譲渡すべきか、はたまた個別に不動産を売却・活用していくべきかなどで経営者の悩みは深いもの。当社は法人に特化した総合不動産コンサルタントならではの観点で、不動産に焦点を当てたアドバイスを行います。各手法を選択した場合のシミュレーションや、想定される買手候補先の確認などを担うことができます」(杉山)
三菱地所グループは国内外60社のグループ企業の顧客基盤を抱えています。また、不動産業者のネットワークのみならず、グループ会社や士業、投資家、一般事業法人などの業務提携先・取引先を通じて様々なニーズへ対応し、オーダーメイドのソリューションを提供できることも選ばれる理由になっています。

不動産と M&A 両方に関する専門性を持つ

PART2 M&Aで陥りやすい点と成功する点

晴海パートナーズ法律事務所

弁護士

櫻井康史

M&Aではそのストラクチャーやスキームにおいて、専門家のアドバイスが必要な局面が多々生じます。本セミナーでは、M&Aプロセスにおいて売手・買手が留意すべきポイントについて、晴海パートナーズ法律事務所の櫻井康史弁護士にご説明いただきました。

欠かせないデューデリジェンスのプロセス

M&Aの流れでまず重要なのが、買手による買収対象企業の事業価値の調査・算定です。デューデリジェンス(DD)と呼ばれ、買手はこのプロセスを欠かすことはできません。まず重要なのが「財務DD」です。貸借対照表分析で不良資産を把握したり、損益計算書から収益力を分析したり、あるいは、キャッシュフロー計算書を通して将来におけるキャッシュフロー獲得能力を評価します。対象会社の財務内容を分析し事業価値を把握することが、買収金額にも直結するため非常に重要です。
M&A取引に与える法的問題点の有無を調査するのが「法務DD」です。主として、取引を阻害するような事項、取引対価に影響を与える事項、取引条件で対処すべき事項などを精査し、さらに取引完了後の円滑な事業運営に役立つ事項の洗い出しも行います。その調査項目は多岐にわたり、全てを網羅することは困難です。
「この場合、特に問題となりそうな事項に限定して調査をする、もしくは売手に最終契約書内で対象会社の事業状況、財務状況などについて表明保証させるといった工夫が必要となります」(櫻井氏)
その他にも、対象会社・対象事業の将来性や、自社とのシナジー効果を図るための「事業DD」や、対象会社の資産のうち不動産が占める割合が大きい場合には、不動産鑑定士による鑑定、建築士・土地家屋調査士による調査など「不動産DD」を実施する場合もあります。

買手から見たM&Aのリスク分析

買手はリスク分析、売手は優先順位付けが鍵に

買手にとってみると、新たな法人や事業を買収する以上、リスクを極力減らすために、きちんとした調査と適正なリスク分析を踏まえた判断が求められます。
一方、売手にとって重要なことは、M&Aで売手が希望する目的を実現させることでしょう。もちろん、相手のある交渉なので全ての希望条件を満たせるとは限りません。「明確に目的を定めた上でその目的を達成するための条件については優先順位をつけ、譲れない点をきちんと勝ち取っていくための交渉力が問われます」(櫻井氏)
また、トラブルを避けるため、合意条件については、最終契約書等で明文化しておく必要があります。特に中小企業の場合、オーナーの処遇について口約束でなされるようなケースもあるようですが、口約束はトラブルの元になります。
DDでは正確な回答を心がけなければなりません。「虚偽の事実を開示したり、報告漏れが生じたりすると、それが買収決定に影響がある事項や買収価格に影響があるような場合、後に損害賠償請求がなされる恐れもあります。特に、簿外債務や不良資産の内容、親族への資金環流等税務上問題になりそうな資金の流れについては正確な情報を開示するように心がけるべきです」(櫻井氏)

売手から見たM&A

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