「事業承継とM&A」第2回 事業承継の解決策であるM&Aのススメ

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目次

第1回では、深刻化する中小企業における事業承継問題について、後継者不足という課題に焦点を当て中小企業の現状を説明しました。
第1回はこちら
本記事では、そんな事業承継問題を解決する一つの策である「M&A」について解説していきます。

事業承継問題の解決策の一つであるM&A

事業承継の形の変化

第1回では同族承継が減少している現状について述べました。これまで子供や親族へ引き継ぐことが主な事業承継の方法であった流れが、社会情勢の影響もあり変わってきていることが見てとれます。代わりに増加している手法の一つである「M&A」ですが、例えば最近の大型M&AではHISのハウステンボスの売却のニュースが記憶に新しいかと思います。日本におけるM&Aの実態はどうなっているのでしょうか。

M&Aの現状とイメージ変化

2021年、国内企業のM&A件数は過去最多の4,280件を記録し、右肩上がりで増加しています。また、従来は大企業が行うものというイメージが強かったM&Aですが、近年は中小企業の実施件数も増加傾向にあり、中小企業庁の発表では、2020年度は2,139件の成約があったとされています。また、公表されていないものも多いと言われており、足元では年間3~4千件程度の成約があるのではないかと推計されています。

事業承継問題が顕在化する中で、政府による支援策や補助金の拡充などの事情も影響し、近年増加傾向にあると考えられます。過去にはいわゆる「ハゲタカ」のような敵対的買収を行う感覚があると言われることの多かったM&Aですが、現在の件数増加に伴い、イメージにも変化が表れています。
10年前と比較したM&Aに対するイメージ変化に関する調査では、買収・売却いずれも以前より抵抗感が薄れたと回答した割合が増加し、M&Aに対するイメージが向上していることがわかります。
少子高齢化も進み後継者不足に陥っている日本社会にとって、M&Aによる事業承継はひとつの打開策となっています。

M&Aに対するイメージの変化

※出典:中小企業白書(2021)㈱東京商工リサーチ「中⼩企業の財務・経営及び事業承継に関するアンケート」より
※M&Aに対するイメージの変化について、「変わらない」と回答した者は表示していない。

M&Aのストラクチャー・スキーム

「株式取得型」と「事業取得型」

件数も増加しプラスのイメージへ変化しているM&Aですが、いざ実施するとなった場合、どのような手法があるのでしょうか。代表的な2つの手法について解説します。

  1. 株式取得型:株式譲渡、第三者割当増資などが代表的。
  2. 事業取得型:事業譲渡、会社分割などが代表的。

①株式取得型-株式譲渡と第三者割当増資

株式取得型の中では、株式譲渡と第三者割当増資が代表的なスキームとして挙げられます。
株式譲渡は、対象会社の株式を第三者へ譲渡し、対価を得る方法です。
第三者割当増資は、会社が特定の第三者に新株を発行する方法を指します。第三者割当増資は資金調達の方法として用いられることが多くあるものの、会社買収に用いられることもあり、買収者は一定数の株式を保有することにより、対象会社への影響力を保持することで会社の支配権を獲得していくことができます。

株式譲渡と第三者割当増資

株式取得型は、対象会社の【株主】が変わるだけで、その法人格そのものや財務状況に直接の影響がないことが特徴です。また、合意に至るまでの手続きが簡便・迅速というメリットもある一方、対象会社の不良債権や簿外債務もそのまま引き継ぐことになるため、この点では注意が必要となります。

②事業取得型-事業譲渡と会社分割

事業取得型は、事業譲渡と会社分割が代表的なスキームになります。
事業譲渡は、対象会社の特定の事業の全部または一部を第三者へ譲渡し、対価を得る方法です。
会社分割は、会社法上の会社分割の方法により対象会社の特定事業の全部または一部を譲渡し、対価を得る方法を指します。いくつかの事業を営んでいる場合は、一つの事業を新設分割して切り出し、その新設会社の株式を譲渡するという方法も考えられます。

事業譲渡と会社分割

事業取得型は、対象会社の【事業】の買収であり、法人格の承継ではないという点が特徴です。事業に必要な資産や人員を切り出しての譲渡も可能で、対象会社の不良債権や簿外債務を引き継ぐ必要がない点は買手にとってメリットとなります。一方、資産移転に関し債権者債務者の個別同意が必要となる為、契約関係の移転同意が得られない見込みの場合は注意が必要です。
また、債務超過の売手もM&Aを行うことができる点は大きな特徴となります。債務超過や営業赤字により倒産寸前でも、事業に価値がある場合、事業のみを承継させ譲渡対価で金融機関へ弁済、金融機関との協議の上残金免除を受け、事業と雇用を確保できるというケースもあります。

M&Aの障壁と相談のススメ

M&Aの件数や認知度は右肩上がりであるものの、日本政策金融公庫総合研究所が実施した調査(経営者の引退と廃業に関するアンケート(2019年12月12日))では、引退廃業者が廃業の際に他社への事業譲渡の検討を行ったという回答が8.8%と1割にも満たなかったという結果が出ています。

M&Aは専門性が高く、実際に検討するとなるとなかなかハードルが高いように感じるかもしれません。従業員の雇用が守られるのか、経営者として正しい判断なのかといった売り手としての悩み、見込んだ事業拡大が図れるのか、相手先従業員の理解が得られるのかといった買い手側の悩みなど、様々な障壁が考えられます。

買い手としてM&Aを実施する際の障壁
売り手としてM&Aを実施する際の障壁

※出典:中小企業白書(2022)より㈱東京商工リサーチ「事業承継に関するアンケート」(2020年11月)

一方、㈱東京商工リサーチがM&A実施企業へ行った調査「中小企業のM&Aに関する調査」では、8割を超える企業が実施後に売り手側の雇用が維持されていると回答しています。また、買い手側では実施後の当期純利益成長率が同業平均値と比較し約20%高いという調査結果もあり、M&Aを行うことは双方の課題解決の一助となっています。

事業承継実施企業の承継後の当期純利益成長率(同業種平均値との差分)

出典:中小企業白書(2021)より㈱東京商工リサーチ「企業情報ファイル:再編加工」

また、現在は国の支援制度が整備され始めており、2021年には中小企業庁がM&A推進計画を策定し、中小企業がM&Aを実施する際の補助金も拡充されています。事業承継・引き継ぎ支援センターも各地にある為、事業承継に課題をお持ちの場合は、是非一度ご相談されることをおすすめします。

企業価値判断としての「不動産価値」の大切さ

計2回のコラムの中で、中小企業の現状やM&Aが事業承継の解決策になると考えられる理由、M&Aのスキームについて説明してきましたが、M&Aを行うにあたり、売り手・買い手双方にとって対象企業の価値判断は大変重要です。特に不動産を所有する企業において、資産の中で大きな割合を占めることの多い【不動産の価値】は企業価値を判断する上で大きな材料となります。一般的なM&A仲介会社や金融機関の場合、不動産専門ではないため、不動産の価値を最大限活用できない可能性も大いにあります。

不動産を時価評価することにより純資産が増加。企業価値の適正化へ繋がります。

当社は、不動産のプロフェッショナルとして、適正な不動産評価を行ったうえでのM&Aサポートが可能です。M&A専門の部署を構え、中小企業のM&A支援に積極的に取り組み、ご相談頂いた企業にとっての最適解を導き出します。

「不動産」と「M&A」の両面から、経営者様・株主様の課題を複合的に解決。

事業承継にお悩みの方は、是非一度ご相談ください。

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