ダンコンサルティング 寄稿コラム 第4回 土木工事会社のロードサイド立地の活用事例

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目次

A社の成長要因

地方都市の中心部から放射線状に延びている幹線道路に面して、土木工事の請負と砂利の販売を主とした事業を展開しているA社の事務所があった。
先代が戦後間もなく骨材等の運搬を中心とした業務を、生まれ故郷の当地で旗上げした。しばらくは細々と個人事業主として営業を続けてきたが、徐々に土木の請負や砂利の販売にまで仕事を広げてきた。
1980年頃に株式会社として法人化したのは、社員が十数人規模に成長してきたころである。
A社の成長要因は、地元の有力ゼネコンが、先代社長の誠実な人柄と仕事ぶりに信頼感を抱いてくれた点と当たり前のことを地道に実行し続けてきた長年の信用。また、人口増加や町づくり、都市計画などその地方都市の成長時期と軌を一にしていたことが、A社の経営基盤づくりに大きく貢献した。
ところが、法人化して5年目に先代社長が亡くなってしまった。専務であった長男(B)が後継者としてスムーズに事業を引き継ぐことができたが、相続税の負担のため死亡退職金を捻出することになった。その結果、会社の資金繰りに大きな影響を及ぼすことになってしまった。
メインバンクの地元金融機関から死亡退職金として相当額の融資を受け、相続税問題をクリアすることはできたが、融資返済のため新社長の役員報酬削減などといったキャッシュフロー対策をとる必要があった。
更に追い打ちをかけるように、その後わずか1年の間に大都市から同業者が3社も進出してきたことで、A社の請負受注量は徐々に低下してしまった。

中小企業の経営改善手法

A社は今後どのような経営方針で進んでいくべきなのか。社長Bをはじめとする3人の取締役(いずれも同族関係者で、社長B・母C・弟D)は役員会議を開く機会が多くなってきた。
中小企業が経営改善計画を立案する場合には、必ず調べておかなくてはならない3つの項目がある。「今後の方向性」と「良質な経営資源」と「資金戦略」の確認である。要するに、企業を継続するためにどのような戦略を立てていくかの重要なポイントになるからだ。
なかでも重要なのが、方向性を確認して、経営幹部の意志統一を図っておくことである。A社の決断は次のようなものだった。

①地元密着型企業としての徹底(今以上に地域に役立つ事業だけを行う)
②請負土木工事部門の利益率向上(内製による労働生産性向上とマッチさせる)
③官庁業務の拡大(指定業者のA級ライセンス取得による直取引態勢づくりを行う)
④有力な経営資源である土地の有効活用(所有土地を最大限活かせる戦略を立てる)
⑤10年後の無借金経営の確立(営業収支比率の維持と新規設備計画をとりやめる)
⑥人材強化と後継者対策(社員のレベルアップと後継者の選定などにコストをかける)

A社のケースでは、まず本社事務所と倉庫および砂利置場として活用している敷地が問題となった。敷地の半分は法人所有で、残り半分は先代社長の相続を経て社長Bと母C(先代社長の妻)が共有名義で所有している。したがって、個人所有の部分については法人が個人から土地を借りている状態となり、法人から個人へ地代が発生していることから、A社のような同族会社においては個人財産を含めたトータルな戦略が必要となってくる。上記の④の具体的な作業といってもよいだろう。

そこで、活用している本社事務所、倉庫、砂利置場のそれぞれについて不動産コンサルタントを交えて検討することとなった。その結果、倉庫や砂利置場については国道沿いの立地にある必要はないが、本社事務所は長年にわたりこの地に存在していたため、シンボルとしても動かせないという判断になったのである。
倉庫や砂利置場として利用できる土地を予算の範囲内で調査した結果、本社事務所から車で30分圏にある山辺の土地を見つけることが出来た。その土地は、予算化した金額の半値以下で購入することが出来たのだ。

時代に合った土地活用の提案

一方、国道沿いの本社を除く倉庫および砂利置場スペースの立地診断を行った結果、物販またはサービス関連のロードサイド店舗への活用が最も収益性が高くなる可能性をつかむことができた。当該地は、国道沿いでも緩やかなカーブ地点であり、カーブの外側立地である。そのうえ、大都市圏からの帰路側のため、アイキャッチの問題や内側立地でない点から飲食をはずしたのだ。そこで今後、需要が見込める業種として、大型ブックセンター、紳士服チェーン店および自動車用品販売のチェーン店に絞り込んだ。
ブックセンター2社、紳士服チェーン店3社、自動車用品チェーン店2社に打診を行うこととした。その結果、自動車用品の販売・修理事業の直営とFC(フランチャイズチェーン)展開をしているX社に的を絞り、詳細な交渉が始まったのである。ただ、A社がFCとして経営するには人材的にも課題が多いため、賃貸事業として安定した収益を目指すこととした。
X社としてはこの地域の1号店になる。そのため、今後のコア店舗と位置付けていた。X社は事務所、店舗、修理工場および駐車場の設置とそれに見合う規模を設定していたため、不動産コンサルタントが2階建て鉄骨造を提案し、A社側からもラフな設計図面を提示した。X社へ賃貸するにしても、A社の本社事務所としての存在価値を示す必要があったからである。
国道沿いを駐車場と店舗スペースとし、修理工場を奥地に配し、店舗と修理工場を区分する真中にA社の入口を設置した。2階がA社の本社事務所となる。外部から見ると、建物の中心部がA社の本社となる。X社としては、1階部分が店舗スペース、2階部分を事務所として利用できるため、ほぼ提示どおりで設計計画に入ることができたのだ。
こうした契約は、A社の代理として企画開発業務を行った不動産コンサルタントがアドバイスしている。契約書のモデルケースもA社側に沿って考えたものだ。

リスクマネジメント対応

資金調達の手法は建設協力金方式の変型とした。建物の一部にA社の本社が同居するためだ。建設費総額はほぼ1億円。X社からの預かり保証金は8,500万円である。ただ、この他に1,500万円の敷金を差し入れてもらうこととなった。
保証金は、契約時、工事着工時、建物完成時にそれぞれ3分の1ずつ預託してもらい、11年目から120回分割で返済する計画である。その返済も、毎月の家賃収入との相殺方式を採用した。敷金は、X社店舗の開店日に差し入れてもらい、契約解除後に返還するという通常のパターンである。もちろん、いずれも利息を付さない条件だ。
A社側からみると建設費1億円、預かり保証金8,500万円、敷金1,500万円のため、建築費については1円の負担もないことになる。そのうえ、この建物内にA社本社事務所を構えるため、イニシャルコストは減少する。
賃貸収入は月額約200万円。新しく購入した砂利置場と倉庫に利用する土地の返済原資は7年返済で毎月20万円の支払いに満たない。
バブル崩壊後、よくみられるパターンが中途解約による土地所有者の嘆きである。償却後の保証金を返還しなければならないうえ、当初のテナント用に設計した建物のため新たなニーズに対応できないパターンが多いのである。A社のケースは、契約書に1ヵ条を加えておいた。中途解約違約金として10年以内に解約した場合は建物の建設費をX社が負担(つまりは保証金の全額償却と敷金分の負担請求)すること、さらには15年以内なら建設費の半額負担を義務づけた。

良質な経営資源の再生

役員会議ではさらに今後の相続時における対応方法も話し合うこととなった。先代社長の相続税で苦慮したからである。そこで、いく通りかのシミュレーションの結果、建物はA社が建設し、A社の名義とすることとした。個人で建設したり、不動産管理会社を設立する方法もあるが、A社の収益力アップと財務体質の改善を考えるとともに管理面の煩雑さも考慮して、A社の新規事業として位置付けることとしたのだ。
不動産管理会社を設立しなかった理由は他にもある。A社の業績が悪化していた2~3年間で相続評価としての株価が下がったことで、社長Bや母Cが持つ株式の移転を後継者などに行っていたからである。
建設スペースが個人所有地となるため、土地所有者の社長Bら個人と建物所有者となるA社は、地代の変更を伴わない相当地代方式で土地の賃貸借契約を交わすこととなった。A社にとっては、いままで支払っていた家賃が地代に変わるのだが、金額的には月額で10万円ほど減少するため、資金繰りは改善されることとなる。土地の活用方法を時代に合うように変化させるだけで、経営にテコ入れすることができたのだ。

その後15年を経て、すでに5年前からは保証金の月割返還も実行している。当初はX社の出店を助けることもあって、賃料を若干割引いていたものの、その後20%程度アップすることができた。したがって、保証金を差し引かれても手取りは当初の家賃収入とあまり変化はない。
A社の看板も大きく国道に面して設置しているため、A社が新しいFC事業にも進出したと思っている地域の住民らも多いようだ。X社もこの立地にフィットしていたようで、この15年間に半径5km圏内に新店舗を2店舗オープンしている。

執筆者

ダンコンサルティング株式会社 代表取締役
経営戦略コンサルタント(税理士)・建築企画プロデューサー

塩見 哲 しおみ さとし

ダンコンサルティング株式会社
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公認会計士事務所を経て、1976年に税理士資格を武器として中小企業経営戦略コンサルタントとして独立。以後、48年にわたり中小企業の目的である「継続」をテーマとして、企業哲学、理念、風土を軸とした経営戦略の立案や企業診断・再生支援・出店企画・資金戦略・人材教育など、経営資源の活性化に関する戦略的コンサルティング業務を一貫して行っている。同時に、法人や個人の所有する不動産の有効活用法や建築企画プロデュース業務、及び、法人や個人の事業継承や相続戦略なども40年以上実践している。 講演、講義、研修講師などは2,000回を超え、経営、資金、不動産、相続、人材などに関する著書は65冊を出版している。

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