事業用不動産 有効活用の妙手! 等価交換とは?
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今では使わなくなってしまった事業用不動産、採算性が低くなっている不動産、遊休不動産の悩みは、企業にとって深刻なもの。再活用したくても、資金的に厳しく活用が進まないケースも珍しくない。そこで、ぜひ検討しておきたいのが、資金が少なくても不動産を再活用できる「等価交換」という仕組みだ。
遊休地、不採算不動産を活用したくても資金が…等価交換で解決できる?
遊休不動産や採算性が悪化している事業用不動産は、管理費や固定資産税などの経費がかかるばかり。なんとか活用したくても、投資する資金が心もとないという話も珍しくない。中にはかつては工場として重要拠点だった場所も、業態転換で工場は稼働しておらず、古屋が残っているだけ、古屋の解体費用の負担も大変だという話もあるだろう。
そんな悩みの解決策としてあげられるのが「等価交換」だ。民間の住宅では、老朽化したマンションの建て替え手法として知られている。不動産所有者が不動産を「デベロッパー」と呼ばれる不動産開発業者に提供、デベロッパーの資金で再開発してもらい、もともとの不動産所有者は提供した不動産の価値に応じて、再開発した不動産の所有権をデベロッパーと案分するものだ。例えば郊外の大規模な工場跡地をデベロッパーと等価交換方式で開発し、商業施設を建設した場合、出来上がった土地建物の所有権はデベロッパーと分け合うことになり、案分された割合相当の賃料収入をテナントから得ることになる。
不動産所有者は資金を負担せず、不動産の現物提供で不採算不動産を再生できる。デベロッパーは、開発できる不動産を取得できるメリットがある。どのような開発をするかはデベロッパーの意向が強くなるが、不動産所有者が反対すればそもそも不動産が提供されないため、両者の協議で決められることになる。
等価交換のメリット、デメリットとは?
等価交換方式のメリットとデメリットにはどんなものがあげられるだろうか。
メリット
●手元資金がなくても対応できる
デベロッパーに不動産を提供し、開発資金はデベロッパーが負担するため、不動産所有者は資金負担がほとんどない。もちろん、資金の借り入れなどの必要もない。
●自社だけではできない再開発が可能
不動産を活用しようにも、どのように活用するかが難しい。結局、駐車場にする、倉庫にするなど、代わり映えがしない活用になりがちだ。それらに向いている不動産ならばいいが、そうでない場合、結局、うまく活用できない。しかし、等価交換方式では、デベロッパーをはじめとした不動産業者が再活用の企画を考えるため、例えば商業施設への転換、マンションの建設、オフィスビルなど、不動産の特性に応じたさまざまな用途への転換が期待できる。
●不動産の権利は維持できる
開発資金の代わりに不動産所有権の一部を手放すが、自社所有分は残るため、不動産の権利は維持できる。
デメリット
●不動産の権利を一部失う
等価交換方式では、手元資金は必要ないが、その代わりに不動産を提供することになる。もちろん、全て提供するわけではないが、デベロッパーと案分して所有することになり、不動産の一部権利を手放す形になる。
●デベロッパーの意向を無視できない
デベロッパーとの共同開発、開発後も共同所有になるため、自社だけで意思決定ができなくなる。そのため、デベロッパー選び、デベロッパーが提示する再開発計画の見極めが重要となる。また等価交換における所有権案分等の条件交渉も必要となる。
●開発に時間がかかる
等価交換で手を組むデベロッパー探し、条件交渉などを含め、開発に時間がかかる。
等価交換の方式と流れはどうなっている?
等価交換を行うには、まず「どのデベロッパーと手を組むか」が重要になってくる。大まかな手順は以下の通りだ。
細かな部分はケースによって異なるが、事業の流れを見てもデベロッパーの重要性が理解できる。言い換えれば、優れたデベロッパーと契約できれば、遊休不動産の再開発の成功確率はあがる。しかし、不動産の専門家ではない多くの企業では、デベロッパーの見極め、またデベロッパーが提出する基礎調査の内容、事業計画の実現可能性の見極めは難しい。そこで、デベロッパーとは別に、不動産コンサルタントの力を借りて、等価交換での不動産活用を進めることも検討したほうがいいだろう。不動産コンサルタントの基礎調査とデベロッパーの基礎調査を見比べるだけでも、その妥当性を判断しやすくなる。また、そもそも等価交換に向いていない物件という可能性もあるため、その判断も不動産コンサルタントの見識を得ることができる。
等価交換に向いている不動産とはどんな不動産なのか?
デベロッパー選びという課題はあるにせよ、手元資金の負担がほとんどない形で遊休不動産の再開発が可能な等価交換には魅力が多い。しかし、どんな土地でも等価交換での再開発が可能かと言うと、そうではない。等価交換に向いた不動産、向かない不動産はある。
まず、普通の住宅地は等価交換に適していない。デベロッパーにとっては用途が制限される上に活用のうまみが少ないからだ。一方、工場跡地、物流施設跡、使われていない広い更地などは等価交換方式に向いていると言える。土地が広ければそれだけ用途の幅が増え、大規模な開発が可能となる。いわゆる駅チカといった立地でなくても幹線道路に近い、高速道路のICにアクセスしやすいなどの条件が整えばさらにいいだろう。
また、古い自社ビルなども等価交換で建て替え、自社所有・利用分以外は賃貸オフィスとする手段もある。
先にも触れたが、等価交換方式での遊休不動産、不採算不動産の再開発を成功させる鍵はデベロッパーが握っていると言っても過言ではない。しかし、どうしてもデベロッパーの意見が強くなり、専門知識に欠けることが多い不動産所有者側は立場が弱くなりがちだ。だからこそ、不動産コンサルタントの知恵を借りることで、デベロッパーと対等に渡り合える環境を作ることがポイントになるだろう。加えるならば、等価交換での再開発後に不動産を売却するケースも珍しくはない。その際にも、不動産売却の相談ができる不動産コンサルタントは力になるだろう。