賃貸オフィス・事務所移転にかかる費用と節約のポイント

「賃貸オフィス・事務所移転にかかる費用と節約のポイント」のアイキャッチ画像

目次

賃貸オフィス・事務所の移転には、移転先のオフィスの賃貸借契約に係る費用以外にも引越し費用や原状回復工事費といった様々な費用がかかります。今回はオフィス・事務所の移転を計画している移転責任者や担当者向けに、オフィス移転に係る費用や手続きを解説するとともに、移転コストを抑えるためのポイントや注意点もご紹介します。

まずはオフィス・事務所の移転にかかる費用をチェック

オフィス・事務所の移転にかかる費用を、以下のようにリストアップしました。

  • 引越し費用
  • 新オフィスの賃料等
  • 新オフィスの整備費用
  • 旧オフィスの原状回復工事の費用
  • 雑費等の諸経費
  • 廃棄物処理の費用
  • 移転を知らせる広告費

各費用の内訳を、項目ごとに解説いたします。

引越し費用

書類やパソコン、各種オフィス什器・備品(什器・備品とは:事務所内で使用する家具・道具のこと)を運搬するための引越し費用が必要です。
オフィスの引越し費用相場は、エリアや企業規模によって大きく異なります。

また、引越し業者よっても料金は変わってきます。多くの引越し業者は「4時間制・8時間制」といった時間制による料金形態と、100kmを基準とした距離制による料金形態を導入しています。

時間や距離が超過すれば、その分だけ追加料金が発生する仕組みです。社員数や運搬する荷物数、引越し業者の料金形態を検討したうえで引越し費用をシミュレーションしてみましょう。

新オフィスの賃料等

「オフィスの賃料」「火災保険料」「敷金」「仲介手数料」などが該当します。

火災保険は、賃貸契約を締結するにあたって必ず加入しなくてはなりません。
火災保険でカバーできる補償範囲は、火災だけに留まりません。水漏れによる下層階への損害、オフィス什器の故障、来訪者がオフィス内で転倒して怪我をした場合なども火災保険でカバーが可能です。

また、賃料については、契約内容によりますが、当月分のみの場合もあれば、入居時期によっては2ヶ月分の家賃を支払うケースもあります。

オフィスの規模や契約内容によっては礼金が必要な場合もあるため、こちらも事前に確認しておきましょう。

そして仲介手数料は、不動産会社へ物件探しを依頼し、賃貸借契約が成立した際にかかる費用です。家賃の1ヶ月分が一般的な目安です。

新オフィスの整備費用

「内装工事費用」や「ネットワークの工事費用」、「什器購入費用」が該当します。

内装やレイアウトにこだわる場合はプランニング費用が別途必要となります。加えて、電気系統や空調設備、防災設備などの工事にも費用が発生します。

ネットワークの工事費用では、LANケーブルをはじめ電話機の設置費や複合機の移設、サーバー設置費などがかかります。金額は業者の費用形態やセキュリティ機能の設定レベルによって変化します。
必要な機能の確認と依頼業者ごとの料金形態も、事前に確認しておきましょう。

そして什器購入費用とは、デスクやチェア、キャビネ、パーテーションなどの什器を購入する費用のことです。
什器は、社員一人ひとりの作業効率に大きく影響する備品です。什器にどこまでのコストをかけるか、新調するのか、移転前のものを使うかといった点を慎重に検討しましょう。

旧オフィスの原状回復工事の費用

旧オフィスの退去に伴い義務付けられているのが、原状回復工事です。ビルの規模やグレード、立地条件によって費用が大きく異なります。

オフィスの原状回復工事で必要となる作業は、主に「什器の撤去」「壁紙の張替え」「床板の再塗装・張替え」「看板の撤去」「壁・窓・天井・床の清掃」などが挙げられます。

具体的な内容はオフィスの使用状況によって異なりますので、退去に関わる契約内容を事前に確認することが大切です。

雑費等の諸経費

名刺や封筒などの事務用品を新調したり、取引先への移転の挨拶状を作成したりといった諸経費もかかります。

廃棄物処理の費用

一般的に、オフィスから生じた廃棄物は「事業系一般廃棄物」とされます。
これらを廃棄する際は、産業廃棄物処理業の許可を得て営業している業者へ依頼が必要です。

移転を知らせる広告費

移転にあたり、新規顧客開拓や事業拡大を図るケースもあるでしょう。
宣伝を兼ねてチラシやパンフレットを制作したり、新聞広告に掲載する場合は、各種広告費もかかります。

費用のリストアップや予算計画の立案、社内外との調整など、オフィス移転は対応することが多いものです。効率よくスムーズに移転を進めるために、不動産会社を利用して物件探しにかかる時間や業務負担を削減することが効果的です。

コスト削減で役立つ7つのポイント

移転は企業にとって一大プロジェクトであり、コスト管理は重要な課題です。「試算した結果、予算を大きく超えてしまった」ということも起こりえます。

そのため、次に紹介する7つのポイントを押さえることで、コスト軽減につながります。

  • ペーパーレス化の取組みを整備する
  • 座席数、会議室数を見直す
  • 居抜き物件への入居を検討する
  • 転居先のビルのグレードやエリアの選定
  • フリーレント交渉が可能か確認する
  • 工事費用が適切か第三者のアドバイスを請う
  • 什器を再利用する

それぞれのポイントについて、以下で解説いたします。

1.ペーパーレス化の取組を整備する

まずはオフィススペースを見直しましょう。
オフィススペースを縮小する方法のひとつとして、リモートワークの導入が挙げられます。
業種や職種にもよりますが、オフィス外でも、オフィスと同様に業務を遂行するためには、ペーパーレスの整備が欠かせないでしょう。

書類管理を紙からデータに変更したり、バックオフィス業務を電子化するなど、どこでも業務を遂行できる環境整備の一環として、ペーパーレスの整備を検討しましょう。業務環境の改善のみならず、書類の保管場所が縮小できるため、物理的なスペースの削減にも繋がります。

2.座席数・会議室数を見直す

座席数や会議室数を見直すのも手段です。
自社の企業活動に適正な座席数・会議室数を見直し、面積を縮小できれば移転費用や経費の削減になります。
他にオフィススペースを縮小する方法の一つとして、フリーアドレス制の導入を検討するのも良いでしょう。

執務スペースとしてのオフィスの役割は近年変化しています。
リモートワークのほか、決まった座席を設けず社員が任意の座席で業務をする「フリーアドレス」や「ABW」を導入する企業も増えてきました。また、執務内に気軽に打ち合わせができるスペースを設けることで、個室会議室を利用することなく打ち合わせが可能です。在席率や会議室の利用用途や人数を分析し、見直すことでオフィス面積の縮小につながるでしょう。

3.居抜き物件への入居を検討する

内装工事費や什器購入費をカットしたいのであれば、移転先に居抜き物件を検討する方法もあります。居抜き物件であればある程度の内部設備や什器がすでに揃っているため、内部工事費をはじめとした初期費用を削減できる可能性があります。

SDGsなどが注目される昨今の状況を受けて、サステナブル経営を推進している企業も少なくないでしょう。オフィスにおいても、従前の設備を再利用することがサステナブルに繋がると考え、居抜き物件の入居募集も見受けられます。

一見、費用が抑えられるように思えますが、居抜き物件の原状回復義務は、次の借主が負う必要があります。原状回復負担のトラブルなどもあるため、居抜き物件に移転する際は契約条件を確認しましょう。

4.転居先のビルのグレードやエリアの選定

ビルのグレードやエリアの選定は賃料を左右する重要な要素です。賃料のほか敷金や礼金、仲介手数料など全ての初期費用に影響します。

あえてビルのグレードを抑えたり、エリアを見直すことで、賃料だけでなく移転に伴う各種初期費用を低減できます。

5.フリーレント交渉が可能か確認する

入居後1~3ヶ月程度の賃料が無料となる契約形態が「フリーレント」です。
不動産会社へフリーレント交渉が可能か否か、確認しておくと良いでしょう。交渉が可能でなおかつ交渉成立となれば、入居1~3ヶ月目の賃料をカットできます。

賃料自体の値下げはほかのテナントに対し不公平であっても、フリーレントであれば月額賃料は同じです。
したがって不動産会社やオーナーにとっては、値下げ交渉よりもフリーレントのほうが応じやすいという事情もあります。

ただし、フリーレントの成立はあくまでも交渉次第。必ずしも成立するわけではないという点も留意しておきましょう。

6.工事費用が適切か第三者のアドバイスを請う

原状回復工事は、指定された業者へ依頼をします。
業者から提示された工事費用が、適切かどうか、確認しましょう。

ただし、オフィス規模や工事内容によって金額も大きく異なり、費用が適切か否か、判断するのは困難と言えます。その場合、第三者へ相談するのも手段の一つです。
仲介業者など、信頼できる第三者に相談し、工事費用が妥当か否か、アドバイスを請うのが良いでしょう。

三菱地所リアルエステートサービスでは、オフィス移転に関するご相談を承っております。
従業員の業務効率や満足度向上につながるオフィスにするためのサポートに加え、状況に応じてオフィス什器などの減価償却期間を考慮した移転の時期をアドバイスさせていただきます。

7.什器を再利用する

旧オフィスで使用していたデスクやチェア、パーテーションなどの什器を再利用するのもおすすめです。不用品の処分にかかる費用や、新調する費用をカットできます。
また、新品ではなく中古什器の購入を検討するのも良いでしょう。

旧オフィスで使っていた什器を、専門のリサイクル業者へ買い取ってもらう方法もあります。まとまった買取金額が回収できれば、その資金を什器の購入費用へ充てられます。

オフィス移転時の注意点

償却金や退去に伴う解約通知を行うタイミングなど、移転時に注意しておきたいポイントについて解説いたします。

償却金について知っておく

償却金とは、敷金のうち退去時に返還されない契約となっているお金のことを指します。敷金は退去時に返還されるのが原則ですが、償却金は返還されません。

大規模ビルでは設定されないことがほとんどですが、個人オーナーのビルでは設定されているケースがあります。

「敷金が全額戻ってくることを想定していたら償却金があり、想定と異なった」という事態にならないよう、償却金の有無や契約内容は事前にしっかりと確認しておきましょう。

旧オフィスの管理会社には6カ月前に連絡

旧オフィスが賃貸物件の場合、普通賃貸借契約であれば一般的に6ヶ月前には退去する旨を物件のオーナーに通知しなくてはなりません。よって、遅くとも6ヶ月前には退去準備から移転まで一連の計画をしっかりと立てておく必要があります。

ただし、定期建物賃貸借契約の場合は、原則、中途解約ができないため、移転の時期は慎重に検討しましょう。

移転の計画が不十分だと効率的に移転作業が進まず、通常業務の時間が削られて利益や機会の損失につながってしまいます。

スムーズな移転は費用の内訳を知ることから

オフィスの移転には、引越しや新オフィスの賃料・預託金、旧オフィスの原状回復作業など様々な場面で資金が必要になります。

移転にかかる費用の内容を理解し、信頼のおける専門業者に依頼することで、時間とコストの削減につながるだけでなく、スムーズな移転計画を実現することができます。オフィス仲介会社は、物件の比較やオーナーへの交渉、内装工事会社の紹介など客観的な立場でアドバイスが可能です。 

お問い合わせ・ご相談はこちら
トップ > コラム > 賃貸オフィス・事務所移転にかかる費用と節約のポイント