不動産投資マーケットレポート 赤坂・六本木エリア

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目次

都内屈指のブランドエリアとされる赤坂・六本木エリアは、ビジネスからエンターテイメントまで、オールマイティな機能を備えた高機能な街。その進化の歩みは留まることなく、東京メトロの「えき・まち連携プロジェクト」を核としたさらなる再開発が進行中です。多彩な顔をもち、職・楽・住を網羅した魅力で注目を集める赤坂・六本木は、さらに価値ある都市へと成長しつつあります。

徳川のお膝元時代から不動の人気を保つ

その名のとおり、多くの坂を有する起伏ゆたかな赤坂界隈。名前の由来は諸説ありますが、生薬や染め草として利用された茜草が群生する高台「赤根山(あかねやま)」に登る坂という説が広く知られています。
六本木の由来は6本の松の木があったことという説や、江戸時代に上杉、朽木、高木、片桐、一柳という木の名のつく6つの大名屋敷があったからという説も。かつては花柳街として華やかな活気を呈した場所ですが、政(まつりごと)の脇を固める重要な役割の事始めは徳川の時代にまで遡ります。

紀伊国坂

見附から四谷方面へと上る「紀伊国坂(Map:C1)」は赤坂の起源とされる坂道。高台と谷を繰り返すこのエリアが歴史の表舞台へと表れたきっかけは、徳川家康が江戸に入城したことでした。台地に身分の高い旗本や役人を、坂下には下級藩士を配することで守りを固めました。今も地名にその名を残す溜池は、江戸の外濠の一部であり、上水として機能していた治水池です。かつては鮒や鯉が放流され、蓮の花が咲く憩いの場でした。この池の端に設けられた茶店が、以降の花街、料亭街の形成につながります。

明治になると華族が住み始め、戦中戦後は陸軍の街から米軍による接収地へ。外国人向けの飲食店やナイトクラブが増え、アメリカ大使館や外国人の集まる国際色豊かな街のイメージが広がりました。
その後時代は移り変わっても、政財界人から文化人、海外から訪れる要人やビジネスパーソンにまで、広く愛される特別な地として歴史を刻んでいます。
徳川家に重用されてきたことで神社仏閣が集っているのも特徴のひとつ。歴代将軍との関わりが深い「山王日枝神社(Map:E2)」や「赤坂氷川神社(Map:D4)」などには、貴重な歴史の遺物が残されています。そのひとつ、江戸型山車の巡行の復活など、江戸の祭礼文化を受け継ぐ役割を、この街が果たしています。
神社仏閣に加え、第20代総理、高橋是清に縁の深い「高橋是清翁記念公園(Map:B2)」、大名屋敷が姿を変えた「氷川公園(Map:D3)」のバラ園など、歴史の面影を宿す数々の名所は都内有数ともいえる緑化スペースの形成につながっています。これも、ハイソサエティな土地ならではのゆとりといえるでしょう。

一歩歩けばエピソードにあたる話題性

歴史的な話を続ければ、大岡越前公の下屋敷があり、勝海舟が暮らし、司馬遼太郎が足繁く通って『赤坂散歩』をしたためた街。そして数十カ国の大使館・領事館が集うという稀有なエリアでもあります。
飲食ならば日本の洋食の代表格、昭和25年創業の「津つ井(Map:D4)」や、1800年代に創業し文豪たちに愛された「重箱(Map:E3)」。スティーブ・ジョブズが熱愛して、特別にカリフォルニアまで送らせた「赤坂青野(Map:C3)」の和菓子など老舗がずらり。「乃木坂しん(Map:B4)」「赤坂菊乃井(Map:D3)」「ピエール・ガニェール(Map:E4)」など、ミシュランガイドに掲載される名店は20軒以上。世界のトップショコラティエ「パスカル・ル・ガック(Map:E3)」が、海外初出店先として選んだのも赤坂です。
エンターテイメントでも、ナイトクラブの「コパカバーナ」「ビブロス」や、トレンディスポットとして名を馳せた「赤坂プリンス(ホテル)」などから、「六本木ヒルズ(Map:B6)」「東京ミッドタウン(Map:C4)」「赤坂サカス(Map:D2)」といった複合型エンタメ施設へ。国立新美術館、サントリー美術館、森美術館はアート・トライアングルと称され、アートとデザインの街としても注目を集めています。
また、東京商工リサーチによれば、2020年度、2021年度、社長の住む街ランキングでは1位が赤坂、3位が六本木とビジネスの面でも筆頭に挙げられます(ちなみに2位は西新宿)。

卓越した利便性と将来性のインテリジェンス

日本がバブルに沸き立った昭和から平成への過渡期。赤坂・六本木エリアはバブルの中心地のひとつとして華々しく賑わっていました。その後、一時期はオフィス利用する企業や飲食店の減少により活気を失いかけますが、脈々と培われ愛されてきた街の魅力が失われることはありませんでした。
21世紀への躍進を期して興った再開発計画が次々と実現、赤坂・六本木エリアは変貌を遂げていき、木造家屋や小規模なアパート、マンションが密集していた六本木6丁目付近は、再開発の呼びかけから15年以上の時を経て、2003年に六本木ヒルズとして生まれ変わりました。萩藩毛利家の下屋敷から陸軍の施設、米軍の接収を経て防衛庁の本庁となった場所は、2007年、東京ミッドタウンとして竣工。かつて天皇警護兵が置かれた兵舎は、やがてラジオ東京からTBSセンター、そして赤坂サカスへ。
周辺のビル群にも、ニーズに応える形で企業の進出が増えています。さらには住空間としての人気も高まり、国土交通省が推奨する職住近接の好適地としても知られるようになっています。ニーズのあるところには必要とされるものが集まり、ますます便利に快適になる、それはいつの世にも変わらない道理です。働くために便利な機能、住むために快適な機能、人が集うところに引き寄せられる飲食店や娯楽のバラエティ。それらが渾然一体となりながら、歴史の趣や豊かな緑地を保ち続けるのが赤坂・六本木エリアです。
「静」と「動」、「刺激」と「癒し」、「歴史」と「将来性」を兼ね備えて求心力を増していく街、赤坂は東京メトロが進める「えき・まち連携プロジェクト」の対象にもなっています。
三菱地所とTBSホールディングスの協働で、赤坂駅に直結した2棟からなる高層ビルを開発。延床面積約21万㎡を超える大規模なプロジェクトです。ビルを中心に、赤坂駅とまちを一体的につなぎ、開放感とにぎわいを備えた空間の整備が進行中。駅とまちの境界を感じさせない駅前空間としての広場や、空港リムジンバスなどを受け入れるバス乗降場、インフォメーション機能の設置なども予定されています。

(仮称)赤坂二・六丁目地区開発計画

まちづくり × エンタメ × 駅の取組が始動
駅とまちが一体となった都市空間を舞台に、エンタテインメントの拠点化と発信力の強化

(仮称)赤坂二・六丁目地区開発計画

国際競争力の強化に資するエンタテインメント産業拠点の形成。
地下鉄駅を中心に、まちの回遊性を高める都市基盤の強化。

(仮称)赤坂二・六丁目地区開発計画

工期:2022~2028年度(予定)
地上40階、地下4階(東街区)
地上19階、地下3階(西街区)
東街区:事務所・店舗・産業支援施設等
西街区:劇場・ホール・宿泊滞在施設等

施行地:東京都港区赤坂二丁目・六丁目地内
施行区域面積:約1.7ha
事業主:三菱地所株式会社/株式会社TBSホールディングス

AKASAKA-ROPPONGI AREA

マップ
  • 赤坂七丁目2番地区
    第一種市街地再開発事業
    竣工予定:2027年度
    ○地上46階/地下1階
    ○住宅、事務所、店舗
    施行地:東京都港区赤坂七丁目2番28号他(地番)
    施行区域面積:約1.2ha
    住居の予定戸数:約640戸※地権者住戸含む
  • 西麻布三丁目北東地区
    第一種市街地再開発事業
    竣工予定:2027年10月
    ○地上55階/地下3階(A街区)
    ○地上3階/地下1階(B街区)
    ○住宅、事務所、商業施設、
     ホテル、子育て支援施設、神社及び寺院
     並びにこれらに付属する建築物
    施行地:東京都港区西麻布三丁目地内
    施行区域面積:約1.6ha
    住居の予定戸数:約500戸※地権者住戸含む
  • 東京ワールドゲート赤坂
    第1期竣工・開業:2024年8月
    第2期竣工予定:2025年10月
    ○地上43階/地下3階
    ○オフィス、ホテル、サービスアパートメント、店舗、クリニック、歴史文化発信施設など
    施行地:東京都港区赤坂二丁目1712番1他(地番)
    敷地面積:約15,750㎡

エリア特性

ハイソサエティに相応しい街

エリア特性を把握するため、「人」と「産業」にフォーカスしてみた。
図表1は、エリア内に居住する労働力人口(15歳以上人口の内、就業者と完全失業者を合わせた人口)の年収を世代別に纏めたものであるが、平均年収は2,610万円であり、東京都平均の約4.7倍であることは大きな特徴と言える。
最も年収が高い50代は3,000万円超、この点は前出、社⾧の住む街ランキングとの相関性が見られそうであるが、若年層も1,000万円超であり、赤坂・六本木エリア一体の経済的活力を感じることができる。また、図表2の将来人口予測では、2025年をピークに減少が予測される東京都に対して、年を追うごとに増加が予測されている。
ハイソサエティな人々の集積がもたらす経済的活力が街の更なる発展を促す、今後、益々注目を集めるエリアと言えるだろう。

図表1 年代別年収額(万円)

図表1 年代別年収額(万円)
出典 :東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。
図表1 年代別年収額(万円)
出典 :東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。

図表2 将来人口予測

図表2 将来人口予測
出典 :東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。
図表2 将来人口予測
出典 :東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。

開発計画により期待が高まる将来性

産業においては、丸の内・大手町、新宿、渋谷へアクセスが良好な立地特性により、幅広い業種から需要を集めている。図表3は、エリア内に所在する業種別事業所数構成比であるが、サービス業、宿泊業、飲食サービス業、学術研究、専門・技術サービス業、情報通信業が東京都の事業所数構成比を上回っている。とりわけ宿泊業、飲食サービス業の集積は、エリア内の商業性の高さを示していると言えよう。また、官庁街である霞ヶ関に程近いためか、テレビ放送局が多いのも特徴の一つである。
エリアの大部分はアジア地域の業務統括拠点や研究開発拠点のより一層の集積を目指す「アジアヘッドクォーター特区」として国からの指定を受けており、その国家戦略を後押しするかのように、前出の通り大規模複合施設開発や再開発計画が予定されている。これにより国際色豊かなビジネス街として成⾧・拡大が見込まれると共に、エリアのブランド価値向上にも作用するだろう。

図表3 業種別事業所数構成比(%)

図表3 業種別事業所数構成比(%)
出典: 東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。
※エリア内もしくは東京都の構成比が5%未満の業種を除く
図表3 業種別事業所数構成比(%)
出典: 東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。
※エリア内もしくは東京都の構成比が5%未満の業種を除く

図表4 本社が所在する主な上場企業

企業名住所ビル名業種
ワイズテーブルコーポレーション港区赤坂8-10-22宿泊業、飲食サービス業
ユナイテッド&コレクティブ港区赤坂1-12-32アーク森ビル宿泊業、飲食サービス業
WDI港区六本木5-5-1ロアビル宿泊業、飲食サービス業
TBSホールディングス港区赤坂5-3-6学術研究、専門・技術サービス業
テレビ朝日ホールディングス港区六本木6-9-1学術研究、専門・技術サービス業
テレビ東京ホールディングス港区六本木3-2-1住友不動産六本木グランドタワー学術研究、専門・技術サービス業
綜合警備保障港区元赤坂1-6-6サービス業
弁護士ドットコム港区六本木4-1-4黒崎ビル情報通信業
日本和装ホールディングス港区六本木6-2-31六本木ヒルズノースタワー卸売業、小売業
小松製作所港区赤坂2-3-6コマツビル製造業
鹿島建設港区元赤坂1-3-1製造業
出典:東京都公表資料、技研商事インターナショナル「MarketAnalyzer™」、
企業HP、適時開示情報より当社にて加工、作成。業種は「日本標準産業分類」による。

エリアブランドに見る賃料水準

不動産マーケット動向について、エリア内に所在するJ-REIT保有資産のデータを基に把握する。
まず足元の状況を反映するとも言える稼働率は、新型コロナウィルス感染症を契機としたテレワーク利用の拡大に伴うオフィス利用度の低下、生活様式の変化による住まいの郊外化傾向等の影響を受けてか、オフィス、レジデンス共に2020-1Hから稼働率の低下が続いていたが、レジデンスは底打ち感が見られ、直近では回復へと進んでいる様子が図表6よりうかがえる。
稼働率の低下が賃料水準の下押しに圧力をかけうるものと思いきや、賃料はオフィス、レジデンス共にコロナ禍前の水準を安定して保っている点が図表7より確認できる。これは、オフィスを中心に賃料水準の下落傾向が広く見られているなか、エリアのブランド力が維持されている結果とも言えるだろう。

図表6 稼働率(%)

図表6 稼働率(%)
出典:東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
※マスターリース等を含む
図表6 稼働率(%)
出典:東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
※マスターリース等を含む

図表7 賃料(円/坪)

図表7 賃料(円/坪)
出典 : 東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
図表7 賃料(円/坪)
出典 : 東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義

過熱した不動産売買マーケットが価格を押し上げる

次に不動産価格である。図表8は、J-REITが決算期に開示する不動産鑑定評価額を取り纏め、2017-1Hの価格を100として指数化したグラフであるが、この5年間で上昇を辿っていることが確認できる。その要因はいくつか考えられるが、大きくはキャップレートの低下(図表9)が不動産価格の押し上げに繋がっていると考えられる。
国内の不動産投資市場において、国の金融政策よる借入コスト低減の影響もあり、海外からも対日不動産投資への注目が高まる中、売買マーケットでは物件取得競争が過熱し、キャップレートの低下と不動産価格の上昇が続いている状況だ。当該エリアにおいては上記の通り、安定した賃料水準による収益確保が期待できることから、より選好される状態にあるとも言えるだろう。
円安により、為替の面からも海外投資家にとっては追い風となる状況下、今後の不動産売買マーケット動向にどのような影響が加わるか注目したい。

図表8 鑑定評価額指数(2017-1H=100)

図表8 鑑定評価額指数(2017-1H=100)
出典:東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
※期間内に一部売却、新規購入、追加購入した物件を除く
図表8 鑑定評価額指数(2017-1H=100)
出典:東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
※期間内に一部売却、新規購入、追加購入した物件を除く

図表9 キャップレート(%)

図表9 キャップレート(%)
出典 : 東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
※期末直還法キャップレートを採用
図表9 キャップレート(%)
出典 : 東急不動産「TOREIT」より当社にて加工、作成
半期:1~6月期を上半期(1H)、7~12月期を下半期(2H)と定義
※期末直還法キャップレートを採用

※本記事の内容は2023年5月時点のものです。

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