不動産ストックビジネスとは?
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年々広がりを見せているストックビジネスの中でも、特に注目されているのが「不動産ストックビジネス」です。先行きが不透明な社会情勢の中、安定した収益が見込める不動産購入の検討や、所有不動産をどのように運用・管理したら良いのか悩んでいる法人・投資家の方は多いのではないでしょうか。
財務省の「新型コロナウイルス感染症による企業活動への影響とポストコロナに向けた新たな事業展開や需要創造等の対応」によると、2021年10月時点で6割近くの企業が、コロナ前と比較して本業収益が「減少」していると回答しています。コロナ禍の影響を受け、本業の代わりに、また、本業以外の新たな収益の柱として、安定的な収入が期待できる不動産ストックビジネスを始める企業が増加しています。そこで、顧客から継続的な収益を得ることができるストックビジネスについて、「不動産ストックビジネス」を中心に、メリット・デメリットや、活用例などについて解説します。
ストックビジネスとは?
ストックビジネスとは、顧客から継続的な収益を得るビジネスのことです。
ガス・水道・電気・通信などのインフラ事業や、映像・音楽配信サービスのサブスクリプションなども該当します。ストックビジネスは、収益の安定性から長期経営の見通しが立てやすいメリットがあります。
ストックビジネスとフロービジネスの違い
顧客から継続的な収益を得るストックビジネスに対して、フロービジネスは、商品やサービスを販売・提供をするごとに収益が発生する売り切り型ビジネスのことをいいます。例えば、飲食店や百貨店などの小売業が該当します。
ストックビジネスの主な種類
ストックビジネスは、継続利用するタイプのサービスに向いています。以下では、ストックビジネスの種類の一部をご紹介します。
定期メンテナンス型
機器や建物の設備といった定期的なメンテナンスが必要な事業です。例えば、透析装置などの医療機器、商業施設のエレベーターやエスカレーター、オフィスビルの空調設備といったものが挙げられます。
定期購入型
ネット通販に代表されるように、商品を買うたびに契約をせず、初回だけの手続きで、定期的に商品を提供するサービスです。食品や消耗品の取り扱いの他、新聞や雑誌の定期購読等もあります。
会員制ビジネス型
月額料金を徴収して設備を提供するフィットネスジムや、サービスの対価として利用料を徴収するウォーターサーバーのレンタル契約などが挙げられます。利用者を会員として囲い込むことで安定的な収益が得やすいビジネスモデルです。
サブスクリプション型
サブスクリプションもストックビジネスの一つです。ユーザーから定期的に利用料を徴収するビジネスです。動画配信や音楽配信がメジャーですが、車・衣服・家具を扱うものなど、広がりを見せています。
紹介型ストックビジネス型
いわゆる代理店スタイルのビジネスモデルです。企業からノウハウを学びながら、またバックアップを受けながら運営できることが強みです。なかには、紹介した顧客がサービスを使い続ける限り報酬が発生するものもあります。
不動産賃貸経営型
マンションやビルの賃貸借契約によって家賃収入を得る不動産賃貸経営は、ストックビジネスの代表的なモデルです。テナントや居住者からの賃料収入で、安定的に継続した収益を得ることができます。契約を長期的に継続させるには、社会情勢やニーズに合わせてマンション・ビルを改修したり、老朽化対策として修繕をして、改修やメンテナンスを行う必要があります。
また、所有不動産を新たな用途で利活用するケースもあります。例えば、遊休地に太陽光発電や看板を設置、空室スペースを貸会議室やトランクルームとして活用するなどが挙げられます。
不動産ストックビジネスのメリット
コロナ禍や長期的な円安など、不安定な情勢の中、不動産活用方法においても、変化が見られています。国土交通省の「令和4年度土地に関する基本施策」によると、少子高齢化社会の影響をうけて、有料老人ホームをはじめとした介護サービス施設は増加傾向が続いています。以下では、不動産ストックビジネスのメリットをご紹介します。
安定した収入が得られる
不動産ストックビジネスのメリットは、安定的な収入が得られる点です。賃貸借契約が成立すれば、契約期間中は毎月安定的に賃料収入が見込めます。
また、長期運用を目的とする不動産投資は、収益の変動幅が比較的小さく安定的な収益確保に向いている事業であると言えます。事業計画が立てやすく、長期的視野でビジネスを展開することが可能です。また、株式などの金融投資にくらべると不況に強く、本業とは別に、収益の柱として取り組む企業が多いと言われています。
事例としては、以下のケースがあります。
- 自社で利用していた物件を賃貸物件として転用するケース
- 自社で利用していた物件の建替えに合わせ、一部を賃貸用のフロアに転用するケース
- 投資用不動産を取得し運用しているケース
特に、本業がフロービジネスの企業にとっては、不動産ストックビジネスの安定した収入が見込める点は大きなメリットと言えるでしょう。
新規事業や需要創出ができる
既存の不動産を活用することで、需要創出や新規事業への利用が可能となります。例えば、社宅を賃貸マンションに転用したり、自社ビルを一部または全フロアを賃貸化したり、駐車場の運営などは不動産資源を有効に活用する手段です。
不動産ストックビジネスのデメリット
不動産ストックビジネスにおいても、デメリットは存在しますが、工夫次第でその軽減が可能です。以下で詳しく解説します。
収益の安定化に時間がかかる
不動産ストックビジネスには、フロービジネスのような即効性はなく、収益を安定させるまでにはある程度の時間が必要です。事業開始時には余裕を持った初期費用の準備や、事業計画をたてることが必要です。
例えば、経営対象のビルやマンションが、最初から満室稼働の場合もありますが、その時の社会情勢や立地などの環境によっては、空室が多い状態で事業がスタートにすることもあります。
また、テナントや入居者の退去も予想されるため、融資の返済計画などとも合わせて、余裕を持ったプランを立てておきましょう。
時代のニーズに合った不動産を提供する必要がある
不動産ストックビジネスは、時代や地域におけるターゲットのニーズに合ったものを提供する必要があります。需要とマッチしていない場合、テナントの入居に苦戦することがあります。新たな不動産を取得したり、老朽化した不動産を改修するだけではなく、定期的なメンテナンスはもちろん、状況に応じてバリューアップすることも大切です。
不動産ストックビジネスを成功に導くためには、競争力の高い、価値ある物件をめざす戦略が必要です。オフィスビルや、一棟マンションの経営の場合のポイントは以下になります。
市場調査 | 地域の特性や賃料相場、空室率、供給動向などのマーケット調査を行い、的確なターゲット像の見極め |
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商品企画 | 市場からマーケットの動向を把握し、ニーズを見据えた商品企画 |
賃料設定 | 市場からマーケットの動向を把握したうえでの適切的確な賃料設定 |
リーシング | 入居者のニーズを適切に捉えた、きめ細やかなリーシングと効果的な営業活動 |
管理運営 | 管理運営に伴う煩雑な業務の体制構築 |
不動産賃貸事業は、運営において発生するほとんどの業務をアウトソーシング可能な事業です。少ない人的リソースで安定した収益を確保でき、専門性の高い業務を外部に委託することで、競争力の高い価値ある物件の不動産ストックビジネスが実現可能です。