• スペシャリストの智
  • リアルな現場
  • The Watch
  • OFFICE JOURNAL
  • 不動産の税金ガイドブック
  • APPRAISAL NEWS
  • 空室率レポート

なぜ米国では住宅が何十年、百年と住み続けられるのか? 日米「中古住宅」管理の違い

2018.03.01

ウォーレン・バフェット氏といえば、世界的に知られた投資家だ。会長兼CEOを務める米国バークシャー・ハサウェイ社の株価は、S&P500(S&P ダウ・ジョーンズ・インデックスが算出しているアメリカの代表的な株価指数)が1965年から2016年までに約127倍になっているのに対し、同じ期間で約1万9,700倍と驚異的な成長を遂げている。

大富豪のバフェット氏はさぞ豪華な邸宅に住んでいるのかと思いきや、1958年にネブラスカ州オマハに3万1,500ドルで購入した家から今も会社に通っているというのだ。

また、ソフトバンクの孫正義社長は、2013年にカリフォルニア州シリコンバレーに約1億1,750万ドルの邸宅を購入したと報道されている。価格の差はあるものの、共通点もある。それは二人とも「新築」にこだわっていないことだ。

日本では古い家は壊して新しく建てるが、米国では手を入れながら、時に住人が代わりながら住み続ける傾向にある。たとえば歌手のジャスティン・ビーバーが2014年にリアリティー・スターのクロエ・カーダシアンに売却した家は、もともとエディ・マーフィーの元妻が住んでいた。また「b」マークのヘッドフォンでも知られるビーツを創業したドクター・ドレは、スーパーモデルのジゼル・ブンチェンとNFLの名クオーターバックであるトム・ブレイディが売り出した豪邸を購入している。こうした例はきりがない。

中古住宅の流通シェアを日米で比較すると、米国90.3%に対し、日本は13.5%にすぎない。
※参考資料:国土交通省「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会2013年」

日本と米国とでこうした違いが生じるのはなぜだろうか。

(写真=romakoma/Shutterstock.com)

日本の「新築信仰」の理由

日本の新築信仰は「神道の影響だ」という意見がある。神道では清らかなことが尊ばれ、日本各地の神社を率いる伊勢神宮は、1300年間にわたり20年に一度造り替えられてきた。

また、「体形が大きくなったために、家の規格が合わなくなったせいだ」という声もある。男性の平均身長をみると、1910年からおよそ100年間の変化は、米国は約172㎝が約176㎝なのに対して、日本は約160㎝が約172㎝と大きく伸びた。

あるいは、欧米諸国にはない住宅の要素「耐震性技術」の目覚ましい進化により、古い家の安全性を疑うためだと指摘する人もいる。また同様に進化した「断熱性技術」がエコかつ経済的メリットがあるからだと考える人もいる。米国は、州によって大きな差があるものの、発電原料の多くを自国で賄えるため家庭用電気代の平均は日本の半分だ。

単純に、古い家には価値がないと見なされ、融資がつきにくいからという声もあるようだ。日本の建物は、税法上の耐用年数をもとに経年減価させる原価法により評価される。つまり、木造住宅は約20年で「0円」という評価が常識として根付いているため、建物の担保評価はつかず、土地の評価額のみで売買される。充分に暮らせる家でも、建物の価値を客観的に示す基準がないため、「0円」と評価されることが多いのだ。

家の価値を維持しながら住む米国

バフェット氏の暮らすオマハは、米国シカゴとデンバーのほぼ中間に位置するネブラスカ州最大の都市である。同市で販売中の戸建ては、不動産情報サイト「Zillow」上では約1,792軒(2017年11月現在)、そのうち新築は101軒(約5.6%)にすぎず、逆に築30年以上の家は1087軒(約60.6%)にものぼる。

なぜこれだけ中古住宅市場が活発なのだろうか。

それは、金融機関と連動して適正な融資金額をはじき出す「不動産鑑定評価」と、買い手を支援する「建物調査」などが後押しているからだと考えられる。

米国の不動産鑑定は、取引事例比較法と原価法を組み合わせて行われる。原価法は連邦法に基づいた米国鑑定基準により、内装や設備まで評価に盛り込んで建物の劣化状態や維持修繕の状況等を判断した上で「実質的な経過年数」が決定され、経済的残存耐用年数が導き出される。

つまり、20年経った家でも新築と同等以上の評価をされる可能性があるのだ。このため建物の維持・向上への意識が高く、資産価値を守るメンテナンスを施された家が売買されるというわけだ。そして、この補修を毎回プロに依頼すると費用がかさむため、壁の塗り替えやフェンスの作製などDIYが暮らしに浸透している。

建物検査(ホーム・インスペクション)の一例をあげると、建築年代や工法別の違いを含む建築全般と地方行政の法律に精通したインスペクターが、買主立ち合いのもと2~3時間で基本項目や特徴を検査した上で、物件の現状レポートを作成する。このレポートに買主は通常約500ドルを支払い、修繕すべき箇所を確認するとともに、最終的に契約するかを判断する。米国では建物の検査基準やインスペクターの資格制度が進み、既に30州以上で制度化されている。

また、日本では古くから「マンションは管理を買え」と言われているが、米国には戸建の管理組合HOA(Home Owners Association)が資産価値を維持している住宅街がある。住宅所有者はHOAと「環境管理約款」を締結しなければならず、外観の色や素材からはじまり、庭や芝の管理まで規制は細部に及ぶ。例えば、傷んだ外壁や芝が刈られていないなど美観を損なっている家はHOAから警告を受け、無視し続けると罰金や訴訟まで厳しい対応を迫られるのだ。

国土交通省は2018年度予算でも60億円を計上、中古住宅市場は育つのか?

国土交通省は前述の報告書で、米国を参考に「経年で一律減価する手法を改め、科目別期待耐用年数を基に建物の期待耐用年数を算出など、中古住宅の適切な建物評価を目指した評価手法の抜本的改善」を提言している。2018年度予算案でも「既存住宅流通・リフォーム市場の活性化」に60億円を計上している。

日本でも住宅履歴情報などのデータベース化や、建物の適切な維持管理、インスペクションなどが促進され、資産価値が適切に評価された中古住宅市場が育つのだろうか。