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2018年6月「民泊新法」施行、不動産活用の選択肢になりえる? 期待される効果と課題

2017.12.14

空き家対策特別措置法が完全施行されるなど、空き家が放置しづらくなりつつある中、長年空いたままの物件を保有するオーナーの間でも、「民泊」への期待が高まっている。民泊とは、観光客に向けて個人宅や投資用の保有物件を有料で貸し出すビジネスの事をさす。2008年に米国でAirbnbがサービスを始めてから世界中で一気に広まったが、日本国内では従来の旅館業法の要件を満たす必要があるなど、ハードルは非常に高かったと言える。
しかし利用を求める声が高まるにつれ、旅館業法が規制緩和され、東京都大田区など一部の特区で認められるようになった。こうした流れの中、2018年6月に施行される「住宅宿泊事業法」(民泊新法)の施行規則がこのほど公布された。基本的に全国のどのエリアでも民泊営業が可能になることから、事実上の“民泊解禁”と評価する声もある。

(写真=yatta/PIXTA)

新法施行により参入しやすくなると言われる2つの理由

同法の下では、客室の面積や宿泊日数の条件などが緩和される。このため旅館業法の規制下や特区でのみ営業できる現在よりも、民泊施設運営のハードルがぐんと下がると見られるのだが、同法が特に注目されているポイントは2つあると考えられる。「用途地域の制限が緩和される」こと、そして「民泊を始める上での手続きが届出で良くなる」ことだ。

これまで民泊施設を運営するには、旅館業上の簡易宿所営業の許可を得るか、特区(国家戦略特別区域)の外国人滞在施設経営事業の認定を受ける必要があった。そして、いずれの場合も、都市計画法上の用途地域による規制を受けていた。ホテルや簡易宿泊所を運営できる用途地域とは、12種のうち6種。第一種住居地域(3,000平方メートル以内)、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域だった。

逆に言えば、この6種の用途地域以外の第一種低層住居専用地域や工業地域などにある空き家や空室は、民泊活用したくてもできなかったのだ。これは特区でも同様で、条例で許可されていない限り、住宅地域での民泊営業はできなかった。しかし新法施行後は基本的にはそうした場所の制限を受けなくなり、住宅地域でも営業できるようになる。

また「届出」で良くなる点もハードルを下げることになる。先述したように、現状で民泊施設を運営するには、簡易宿所営業の許可か特区で事業の認定を受ける必要がある。だが同法施行後は、都道府県知事や政令指定市長などに、氏名や住所、物件所在地や建物図面等を届け出れば良いということになる。許可や認可に比べてハードルは低い手続きと言えるだろう。

なお残る問題 新たに生まれる制限

しかし新法が施行されても、参入にあたっては注意が必要だ。

まず分譲マンションの場合、管理規約に関する定めの遵守は、旅館業・特区民泊と変わらず当然必要だ。マンションの管理規約で禁止されていれば、一部専有部分での民泊営業はできない。消防規定についても詳細はまだ定かではないが、旅館業などと同じく規制に則った運営となる。

さらに新法施行後は、年間の営業が180日以内に制限される。自治体毎に日数を定めることも可能だ。空室や空き家を民泊に活用するためには、この180日以外の日をどのように活用できるかが重要となる。

また、用途地域の制限が緩和されたとはいえ、民泊施設として収益性を確保するには、観光地として人気のエリアであったり、体験型の滞在ができたりといった付加価値がなければ、稼動(貸し出し)が180日にも及ばない可能性も考えられる。

逆に観光地、商用地、住宅地として一定のニーズが見込めるエリアなら、365日フル稼働で多彩な貸し出しが可能になるかもしれない。

企業として参入の可能性

現実に、180日の制限以外の日数を別の形式で貸し出し、実質365日稼働できるシステムを構築し始めた企業もあるようだ。1ヵ月未満の利用を民泊営業日数と換算し、それ以上では定期借家契約でマンスリー貸しにしたり、宿泊を伴わない時間利用でも使用できたりするという。

新法の施行によって、民泊の可能性が明確化されてきたことで、これまで慎重だった旅行会社も、民泊ホストに対してのアドバイスやコンサルティングとして事業が生まれるかもしれない。

空き家や余剰の部屋を持っている不動産オーナーにとって、新法が注目に価することは間違いない。さまざまなハードルはあり、楽に物件の活用ができるようになるわけではないが、新たな物件活用の選択肢として「民泊」に注目するオーナーは増えるだろう。