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はじめに

夏の喧騒が嘘のように静まった、秋や冬の湘南の海も魅力的だ。「湘南で芸術に触れる 前編」では相模湾や富士山を前にした貴重な眺望を持つ「神奈川県立近代美術館 葉山」をご紹介しが、忘れてはならない湘南の大きな魅力は、古都・鎌倉に代表されるような歴史があるというこだ。

数々の寺社が点在する鎌倉の街を歩けば、そこここで悠久の歴史に触れることができる。また明治以降、文化人や政財界の人々が滞在・交流する場として親しまれた湘南には、別荘や保養地に使われたさまざまな近代建築が残されており、こうした歴史的建造物は鎌倉の文化の礎となってきた。そうした鎌倉の歴史に触れるのに最適な施設として『鎌倉歴史文化交流館』が2017年5月に開館した。

鎌倉における近現代の建築として忘れられないのが、神奈川県立近代美術館のいわばルーツであり、“カマキン” の愛称で親しまれた『旧神奈川県立近代美術館鎌倉館本館』(旧鎌倉館)と、神奈川県立近代美術館の顔を担う『神奈川県立近代美術館 鎌倉別館』(2019年9月まで改修工事のため休館中)がある。そして鎌倉歴史文化交流館もまた新しい鎌倉の現代建築として注目されている。

第9回となるWeekend Museumは鎌倉歴史文化交流館の展示を通じて鎌倉の歴史に、鎌倉に点在する寺社や邸宅、ホテルといった建築物や、神奈川県立近代美術館 鎌倉別館や旧鎌倉館といった近現代の建築物を直に目にすることで、立体的に鎌倉の芸術と歴史を紹介する。ナビゲーターは京都国立博物館でご一緒した時岡碧さん、神奈川県立近代美術館葉山でご一緒した櫻井彩子さんにお願いした。

ミュージアムとして息を吹き返した世界的な建築

鎌倉が歴史の表舞台に出て来るのは鎌倉時代だが、遡ってそれ以前の原始・古代、劇的に変化した中世、参詣地や観光地として賑わった近世~近代から現在にいたるまでと、鎌倉の歴史は実に壮大だ。その悠久の歴史の中で、鎌倉には世界に誇る貴重な歴史的・文化的遺産が、現代まで豊富に引き継がれており、このことが鎌倉を「古都」として、世界に認識せしめている理由と言えるだろう。この古都・鎌倉の歴史を振り返り、文化に触れ、それらに対する理解を深め、さらに市民や訪れる方々の交流を促進する施設として、2017年5月、鎌倉市扇ガ谷(おうぎがやつ)に開館したのが『鎌倉歴史文化交流館』だ。

同館の建物は本来は個人宅として建てられたもので、香港上海銀行本店(1986年)をはじめ、先進的な建築で知られ、米国アップル社本社の設計を手がけて話題となっているイギリスの世界的な建築家ノーマン・フォスター卿が率いるフォスター・アンド・パートナーズが設計したもので、2004年に「Kamakura House」として竣工したもの。2013年に鎌倉市が土地・建物を取得し、前所有者から施設整備費として15億円が寄贈され、既存建築のデザインに配慮した形で改修工事を行い、2017年5月に開館した。

平行構造の壁が並ぶ、独特な外観を持ち、これらの壁で仕切られた内部空間は、奥へと進むにつれて外部風景を取り込み、「暗」から「明」へと移行していく、ドラマティックな建築構成を成している。さらに一部には光ファイバーを組み込んだ人造大理石や、廃テレビ管を利用したガラスブロックなど、特殊な素材で独特な雰囲気を醸し出している。展示室は住宅だった時の形を可能な限り活かしており、ガレージがエントランスとなり、ゲストルームをひとつにまとめた展示室、外光の入るリビングだった部屋には紫外線の影響を受けにくい展示物を展示するなど、改修、展示方法ともに工夫がなされている。


世界的な建築家ノーマン・フォスター卿による住宅建築をミュージアムに転換した「鎌倉歴史文化交流館」


平行する分厚い壁を並べた重厚な本館外観