はじめに

芸術の秋ともなると、あちこちの美術館でさまざまな企画展が行われたり、アートイベントも増えて、目移りしてしまう。同時に秋は旅の季節でもあり、旅とアートを同時に楽しむにはとてもいい季節だ。海外や地方に足を伸ばして、本格的にアートの旅を楽しむのももちろん良いのだが、比較的近いところにも素晴らしい場所がある。首都圏なら前回、ご紹介した箱根をはじめ、軽井沢や那須高原などが知られているが、湘南もそのひとつだ。

第7回となるWeekend Museumは、美術館としてはありそうでなかなかない、海辺にある、素晴らしい景色と芸術を同時に楽しめる美術館を紹介する。湘南・葉山にある〝絶景美術館〟と言って差し支えない景色がある美術館、『神奈川県立近代美術館 葉山』だ。ナビゲートするのは、フリーアナウンサーで産業カウンセラーやキャリアコンサルタントとしての顔ももつ櫻井彩子さん。それでは、絶景とアートを求める、湘南への小さな旅にご一緒しましょう。


神奈川県立近代美術館 葉山の庭園より三ヶ岡山を見上げる。山口牧生《棒状の石あるいはCosmic Nucleus》1976年 黒御影石

湘南の海、さらに富士山を望む

葉山は湘南と呼ばれるエリアでは比較的東寄りにあり、西隣の逗子や鎌倉、東隣の横須賀という大きな町の間に位置する、海と山に囲まれた自然がいっぱいの場所だ。周囲を海に囲まれた国土を持つ日本だが、実は海辺にある美術館は数えるほどしかない。その中でも神奈川県には横須賀美術館など、海辺にある美術館を有しており、その代表と言えるのが、この『神奈川県立近代美術館 葉山』だ。


神奈川県立近代美術館 葉山は鎌倉館、鎌倉別館に続き、2003年に開館した


庭園の向こうに相模湾の海が見える

神奈川県立近代美術館 葉山は、逗子駅から海沿いの道を車で15分ほど行った、一色海岸と三ヶ岡山という海と山に面したところにある。美術館の中庭に出ると、庭園の松林ごしに一色海岸の浜辺に寄せる波音がすぐそばにいるかのように聴こえてくる。美術館の展望台から西側の海をはさんだ向こうには、江ノ島が見え、その向こうには伊豆半島の山々が望める。天気が良い日には伊豆の山々のうしろに富士山の雄大な姿が現れる。まさに絶景がそこにある。