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建物リスク管理とCRE戦略

耐震性評価は年々厳しくなっている

──いまCREの観点でトピックスになっているのは耐震関係です。特にPML(予想最大損失率)評価が厳しくなってきています。

 特に外資系ファンドの投資家の目が厳しくなっています。東日本大震災の経験や、首都直下型地震への不安が背景にあるようです。耐震性評価では、構造計算書のレビュー依頼も増えました。かつては一部の物件だけだったのですが、最近は建物診断と必ずセットになってやるようになりました。ホテルや旅館、一部の商業施設は、2015年12月末までに耐震診断を終了するように義務づけられましたので、それに合わせた駆け込み需要も増えています。
 耐震診断は図面さえ揃っていれば、通常4ヶ月で終わりますが、これがない場合は、実際にコンクリートに穴を開けたり、非破壊検査などをして構造図をもう一度作り直さなければならないことがあります。また補助金交付を受けての耐震診断の場合は、評定委員会の審査にさらに時間がかかりますから、最低でも半年という場合もあります。
 地震がいつ発生するのかについては人智の及ばないことですが、それに備えて耐震診断をいつ始め、いつ終えるかは十分スケジューリングできる仕事です。いざ地震が発生したらその後の建設コストは急騰するはず。その前に、自分たちでゴールを設定しながら対策に取り組むことが重要になります。

──今後の建物リスク診断はどういう方向性に進みますか。

 昨今は水害も深刻化しています。こうした状況変化を柔軟に取り入れ、診断項目を時代とともに変化させていくことが大切です。
 不動産売買にかかわる遵法性の意識は以前に比べるとはるかに高くなっています。かつては耐震補強を将来やりますと行って見積もりを出すだけで金融機関から融資を受けることが可能なケースもありましたが、今ではそれは許されない。消火器一つとっても、設置したことの証明写真が書類に添付されていないと、融資話が先に進まないこともよくあります。リスク診断の厳格化はさらに進むと思います。

不動産リスクの専門家との協業が欠かせない

──企業のCRE担当者は、いま何から準備をするべきか、アドバイスをいただけますか。

 最初に申し上げましたが、まずは建築関係の資料や図面などの情報整理から手をつけていただきたいと思います。そのためにも、建築設計事務所、CRE戦略やリスクマネジメントのコンサルタントなどプロフェッショナルを味方につけることが大切です。建築関係では専門的な知識がないとその重要性すら判断できない資料がたくさんあります。これらの整備状況を確認してデータベースを作成したり、物件ごとに優先順位をつけて耐震診断に取り組んだりするためには、やはりプロの力が必要です。
 企業が法令を遵守することはもちろん大切ですが、たんに法律を守ってさえいればいいというのではなく、これからは従業員や地域の安全安心を担保するという、より高いレベルに立ってリスクマネジメントを行っていくことが重要だと思います。実際、東日本大震災をきっかけに、耐震性のある自社ビルをさらに建物の揺れが少ない制震構造に補強した経営者がいました。ビルが倒潰しない以上に、建物内の従業員の安全を考えた結果だと聞いています。こうした先進的な取り組みが徐々に広がっていくといいと思います。アスベストやPCBなどの環境汚染問題についても、こうした取り組みは必要になっています。

──CRE戦略の中に、そうしたリスクマネジメントの観点がもっと加わるべきだと私たちも考えています。CRE情報の一元化を進めるにあたっては、私たち三菱地所リアルエステートサービスもソリューションを提供しています。建物リスク調査という点でも、今後、御社との協業機会が増えていくと思います。本日はありがとうございました。

Profile

東京海上日動リスクコンサルティング
不動産デューデリジェンス本部 本部長

渡部 弘之

早稲田大学理工学研究科卒業。1989年東京海上火災保険入社。企業向けのリスクマネジメント部門での地震や風水害リスクに関わるリスク評価モデルの開発。土壌汚染保険商品の開発等を経て、2005年より現職にて不動産証券化に関わるリスク評価業務を立ち上げる。これまでのREIT(不動産投資信託)向け等のエンジニアリングレポートなどの実績は10,000件を越える。

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