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まとめ③:BCP施策によってCRE戦略との関わりに濃淡

 これまで見てきたように、BCPの施策メニューにおいては、施策によってCRE戦略との関わりの度合いに濃淡があると考えられる。
 前回のコラムで考察した通り、工場のケースにおいては、自社の他工場にバーチャルに主力生産拠点の代替機能を持たせる施策、外部企業への委託生産を確保・拡大し、アウトソーシングを戦略的に活用する施策、さらには自社内の供給体制にとどまらず、サプライヤー、物流ベンダー、ITベンダーなどサプライチェーン全体に関わる外部ベンダーに対して、緊急時の代替機能の整備などBCPの強化を要請する施策では、新たな設備投資負担がほとんど発生せず、不動産との関わりも小さい(図表1)。
 これに対して、工場建屋の耐震性能・省エネ性能の強化、自家発電機能の装備のためのスペース確保、棚卸資産積み増しに伴う保管倉庫の新増設(リスク分散に一層重点を置くならば、工場構外での新増設も想定され得る)といった工場構内での施策、さらには拠点配置の分散化に伴う適地での用地選定・調達および建屋建設といった工場構外での施策は、不動産との関わりが大きい(図表1)。このためCRE部門は、事業部門や工務部門などと連携しつつ、専門的知見に裏打ちされた不動産サービスの提案・提供を行い、経営層によるBCP施策の策定・実行にしっかりと貢献していくことが重要となる。
 一方、本社オフィスのBCP強化施策メニューとしては、①耐震補強・省エネのための改修や②非常用発電機および燃料タンクの装備など現本社ビルでの施策、③老朽化した自社ビルのBCPに対応できる設備仕様を備えたオフィスビルへの建替え(現本社敷地内での建替えだけでなく、前回のコラムで説明した「最適立地の戦略」に基づいて、新規立地へ移転して建て替えるケースも想定され得る)、④老朽化した自社ビルの売却およびBCPに対応できる設備仕様・立地条件を備えた賃貸ビルへの移転、⑤バックアップオフィスの確保(所有または賃借)などが挙げられる(図表2)。
 バックアップオフィス機能の確保については、企業寮を活用することも一法だ。例えば、伊藤忠商事は、首都圏4か所に分散している男子独身寮を統合し、2018年4月に一棟当たりとしては業界最大規模(約360戸)の独身寮を日吉(神奈川県横浜市港北区)に新設する予定だが、災害時のBCP対策として、東京本社のサブオフィス機能を果たすべく、社内と同様のネット環境や電気供給可能な電源設備の確保、食料・水・防災用品の常時備蓄を予定しているという。
 以上のように、本社オフィスのBCP強化施策は、いずれも不動産との関わりが大きい。このためCRE部門は、人事部門、IT部門、財務部門、事業部門など社内の関連部署との連携を図りつつ、外部の不動産サービスベンダーも戦略的に活用することにより、主導的な立場に立って本社オフィスのBCP強化施策を経営トップに提案し、実施していくことが求められる。

図表1 国内の主力工場におけるBCP強化の施策メニューとCRE戦略との関わり
(資料)百嶋徹「CRE基礎講座/第3回BCPとCRE戦略~国内中核工場の場合~」日本経済新聞社『企業価値向上のための実践的CRE戦略』(日経電子版2011年9月30日)からニッセイ基礎研究所作成。

図表2 本社オフィスにおけるBCP強化の施策メニューとCRE戦略との関わり
(資料)ニッセイ基礎研究所作成

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