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 前回のコラムでは、経営層による中期的な経営戦略の遂行をサポートする不動産マネジメントの立案・実行を「マネジメント・レイヤーのCRE戦略」と呼び、その重要性を指摘したが、オフィス戦略にも「オフィスは管財や不動産投資の物的対象」との発想を超えて、中期の経営的視点を取り入れるべきだ。イノベーション促進のためのあるべきオフィス戦略も、マネジメント・レイヤーのCRE戦略と言える。
 『企業経営者に向けたCRE戦略概論』では、経営視点のオフィス戦略を前編・後編の2回に分けて取り上げる。今回はまずあるべきオフィス戦略論について考えてみたい。

オフィスづくりの創意工夫を競い合う時代に

 グローバル競争が激化する下で、我が国の企業では知識創造活動による差別化の重要性が高まっている。従業員の創造性を企業競争力の源泉と認識し、それを最大限に引き出し革新的なイノベーション創出につなげていくことが求められている。「従業員は放任すると怠惰をむさぼる」との性悪説的な前提の下で、従業員の働き方を厳格に監視・抑圧するのではなく、知識創造を担う従業員が創造性や感性を磨き高められるような環境を戦略的に整備・提供することこそが、経営トップの重要な役割であり責務だ。
 従業員の創造性を高めるための中核的な経営戦略として、従業員が働くための場・空間(ワークプレイス)であり、知識創造活動の舞台となるオフィスづくりに注目したい。自由闊達で創造性豊かな組織文化を醸成し、独創的なイノベーション創出の起点となるようなオフィスの仕掛け・工夫が求められる。先進的なグローバル企業は、すでにそのような考え方を実践しており、オフィスづくりの創意工夫を競い合っている。
 一方、性悪説的な人事管理の下では、従業員はコスト項目の1つにすぎず、利益捻出のためのコスト削減対象と考えられ、オフィスづくりにも戦略投資を行うとの発想は生まれない。これでは従業員の士気低下を招き、知識創造の好循環ではなく縮小均衡の悪循環に陥ってしまう。

オフィス空間に関わる意思決定は企業価値向上に極めて重要

 オフィス環境は、従業員のモチベーションやワークスタイル、社内のインフォーマルなコミュニケーションや人的ネットワークの質を左右し、これらの質が向上すれば、従業員間のコラボレーションの促進などを通じて創造性が引き出され、業務の生産性や品質の向上につながり、人的資源管理(HRM:Human Resource Management)にプラスの効果をもたらす。また、働きやすいオフィス環境を提供することは、企業のブランド価値を高めて優秀な人材の確保・定着につながりやすく、将来の人事採用にもプラス効果が期待される。
 最終的には、研究開発など知識集約型の非ルーチン業務では、製品・サービスの画期的な開発などにつながり得ると考えられる。またルーチン業務でも、職場のメンタルヘルス向上を通じて作業ミスの防止・作業効率の向上につながり得るだろう。いずれもイノベーションが創出され、企業価値向上につながり得ることを示している(図1)。
 このように、従業員のモチベーションや社内のコミュニケーションに配慮し働きかけるオフィス環境の整備など、オフィスの空間価値に関わる意思決定は、企業価値向上にとって極めて重要だ。なお、ここでのオフィス環境は、ビルの施設環境・性能などのハード面にとどまらず、立地するロケーション、入居する部門の組合わせなども含まれることに留意する必要がある。
 本社機能などのオフィス移転・集約や社屋建て替えでは、単純なスペースの見直しや賃料削減などコスト削減だけに終わらせてはならない。コスト削減ありきの施策は、従業員に後ろ向きのリストラを連想させ、士気の低下や反発を招きかねない。そうではなく、従業員の創造性を引き出すオフィスづくりを目指すべきだ。

バックナンバー

  1. vol.16
    クリエイティブオフィス戦略で
    新たなイノベーションを
    働き方改革を「場」の視点から再構築
    創造性を促すワークプレイスのススメ
    (百嶋 徹氏)
  2. vol.15
    スペシャリストの智
    CREカンファレンス2017-2018・レポート
    2018年成長する企業の資質とは。
    企業体力強化に備える不動産戦略のポイント。
  3. vol.14
    変革の時代に日本企業の強みを生かす
    CRE戦略を通した「稼ぐ力」の向上
    今後10年の企業ビジョンとCRE戦略の重要性
    (冨山 和彦氏)
  4. vol.13
    企業価値向上のカギを握る
    CREプロフェッショナルの社内育成
    社内外の専門家のネットワークを最大限に活用する
    (村木 信爾氏)
  5. vol.12
    企業価値を高める
    CRE戦略の一環としての
    ワークプレイス改革
    (齋藤 敦子氏)
  6. vol.11
    中堅中小企業が今取り組むべきCRE戦略とは
    不動産の棚卸しから、
    事業継続、相続・承継問題まで
    (平川 茂氏)
  7. vol.10
    リノベーションによる耐震、省エネ、環境保全で
    企業価値の向上
    求められる多様なニーズに対応した
    オフィスビルのリノベーション
    (河向 昭氏)
  8. vol.09
    スペシャリストの智
    CREカンファレンス・レポート
    クラウド化がもたらした加速する社会基盤。
    今の企業価値を考える。
  9. vol.08
    企業価値向上のカギとなる
    クラウド導入で進めるシステム改革
    顧客のビジネス価値を高める企業姿勢
    (保科 実氏)
  10. vol.07
    クラウドを利用した動産管理と企業価値の向上
    「e-Leasing」と「CRE@M」が目指すもの
    (長谷川 善貴氏)
  11. vol.06
    環境保全しながら
    経済合理性のある土地活用を
    (西村 実氏)
  12. vol.05
    不動産を流動化させて経営の劇的な改善を
    バイアウト投資市場からみた企業のCRE戦略
    (南黒沢 晃氏)
  13. vol.04
    現在において考えるべき
    リスクマネジメントとCRE戦略
    (渡部 弘之氏)
  14. vol.03
    企業の成長に欠かせないM&A戦略。
    CRE(企業不動産)の位置づけが重要に
    (大山 敬義氏)
  15. vol.02
    未来に向けたCRE戦略
    外部の専門企業との連携が鍵に
    (百嶋 徹氏)
  16. vol.01
    不動産市況が好転した今年こそ
    CRE戦略再スタートの元年に
    (土岐 好隆氏)