最新のオフィス事情から考える借りるニーズの多様性。

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目次

「平成」の締めくくりを目前に、新時代に向けた新たな企業スタイルが見られるようになってきました。働き方改革も次の時代を見据え進化の試みが始まっています。
最新のオフィスのあり方はどのようなものか。変化するオフィスマーケット、オフィス移転を行う上でのポイント、最近の移転企業の移転動機やトレンドを専門部署にインタビューします。

オフィス移転の総合コンサルタント

──ビル営業部のサービス内容についてお聞かせください。

蓮山 私たちは、オフィスの移転・新設を検討されている企業にオフィスビルをご紹介する仲介事業を行っています。当社の仲介事業の特徴として、単に物件をご紹介するだけでなく移転の検討段階からお話を伺い、オフィスの現状分析などを通じ、その企業に適したオフィス面積・エリアや設備など、移転に対する要件を明確にした上で最適な物件のご紹介をさせていただきます。
また将来的な移転検討をされている企業様に対しても、想定されます賃料や移転コスト、希望エリアの開発計画提案、レイアウトプラン作成、移転スケジュールの策定までシミュレーションを行い、実際の移転実施に至るまでの総合的なサポートを行っています。まだ移転を迷われている段階の企業様からも多くのご相談をいただいています。

──近年のオフィスマーケットの状況はどのような特徴が見られるでしょうか

当社が発表している空室率レポート(2018年10月末時点)を見ても、東京主要5区の空室率は9ヶ月連続の低下、平均募集賃料は上昇傾向が続いています。2020年に向けて新築オフィスビルの供給は多いものの、企業のオフィス需要も高まっており、新築オフィスビルの成約状況も着実に進んでいます。また既存ビルの二次空室の発生も見込まれていますが、館内入居企業の借り増しが多い為、想定よりも外部への募集面積が少ない状況が続いています。

蓮山 近年のオフィスエリアでは企業誘致についても特徴が出てきております。例えば、丸の内・大手町は三菱地所がフィンテック関連企業の誘致と業界の活動拠点となる場を目指しており、赤坂・六本木に多かった大手弁護士事務所が丸の内・大手町へ移転した動きもあります。また、日本橋では製薬会社を中心とした産業創造を強化するためライフサイエンス拠点を目指した動きがあります。虎ノ門・六本木ではIT関連や外資系企業の集積地として、渋谷ではベンチャー発祥地としての整備が進み、IT関連の集積地としてスポットを浴びています。また、今後再開発が進む田町エリアもAI関連や成長企業が渋谷よりも賃料の割安なエリアを求めたことで人気が高まっています。このようにデベロッパーがエリアマネジメント戦略を以て企業誘致を進めていくことで、オフィスエリアとしての価値も高まっていくと考えます。

ビル営業二部 蓮山 正志

オフィス移転の最新トレンドとニーズとは

──最近のオフィス移転にトレンドはありますか。

小笠原 オフィス移転にあたり様々な企業から『働き方改革』がキーワードとして挙げられます。オフィス移転により働き方改革を行うケースとして、3つの要素があります。移転をすることで、「リクルーティング力の向上」・「生産性の向上」・「多様性のある働き方」の3つの効果を目的とした移転です。

──トレンドの背景として、企業はどのようなニーズや狙いを持ってオフィス移転に臨むのでしょうか。

私の担当しておりますお客様で最もあげられるトレンドとしては、リクルーティング力の向上を目的として現ビルより条件が良いビルへ移転する傾向があります。ベンチャーや成長性の高い企業は業績に応じて、より設備が良くグレードが高いビルへ移転することや、オフィス内装などにコストを投じることで、人材採用面での競争力を同業他社よりも高め、反対に人材の流出を減らそうとする傾向が見られます。

小笠原 現在多くの業種において企業の業績が伸びており、企業は従業員を増やしたいが人手不足で人材採用が難しいという課題を抱えています。一方雇用される従業員としては、立地やグレードの良いビルで働きたい、働く場であるオフィス環境がより整った企業で働きたいという要望が強くなっています。オフィス環境に投資することは、企業の人材確保における一つの大きな武器であり、企業におけるブランド構築の方法になっていると感じています。

蓮山 これまで東京以外に自社ビルや工場を所有していた大手企業が、都心にオフィスを設ける動きも見られます。具体的には、大手自動車メーカーがAI技術開発拠点として日本橋に約6,500坪のオフィスを構える予定です。背景にはより優秀なエンジニアを確保したいという狙いがあるようです。
また、大手企業は生産性の向上を目的とすることが多いです。複数フロアや複数拠点に分散したオフィスを、コミュニケーションの円滑化等を目的に1箇所に集約する動きや、1フロア面積の大きなビルに移転することで、レイアウト効率を上げ、オフィス面積圧縮をしていく傾向も引き続き多いと感じます。

必ずしもオフィス移転に紐づくものではありませんが、多様性のある働き方の改革促進を目的として、オフィス移転を考える企業も増えてきています。シニア世代の親の介護を抱えた社員や育児中の社員など、様々な人材が働きやすい方法や環境を企業側が整える傾向があります。例えば時短勤務制度、サテライトオフィスの法人契約、ICTツールの導入などによって、必ずしもオフィスに出勤しないで働けるテレワークの環境を整えることなども、今の企業に求められてきています。多様な働き手の受け皿としてオフィスの在り方も変化してきているのです。

小笠原 企業の要望の変化に伴い、移転検討企業を誘致する新築ビルの設備にも変化がみられます。最近では入居企業向けの共用の施設として、貸会議室やラウンジスペースがビルの共用部に設けられることが増えており、企業が移転先を検討する際の新たな付加価値となっています。例えば大手町の新築ビルでは、入居企業が簡単な打合わせやランチ・リフレッシュ目的等で自由に利用できるラウンジを共用スペースとして提供しています。

蓮山 また、天井をスケルトン状態で引き渡すビルなども出てきています。背景には、入居企業がクリエィティブなオフィスやリフレッシュスペースを設ける際に、天井をスケルトンにする要望も増えており、そのニーズに対しビル側の引渡し基準にも変化が出てきています。

ビル営業一部 柴 理沙子

課題の明確化が移転の鍵を握る

──三菱地所リアルエステートサービスも5月に本社を移転されましたが、変わったと感じることありますか。

移転前は480名の社員が4フロアに分かれていたため、お互いに顔も名前もわからないということがありました。今回の移転で1フロアに集約したおかげで社員同士のコミュニケーションが活発になったと感じています。以前は部署内のみで解決することが多かった課題も、他部署へ相談したり情報共有するケースが増え、風通しの良い環境になったと感じます。

小笠原 移転前は固定された自席での業務が中心でしたが、新オフィスではフリーアドレス制の導入と、フリースペースを設置したことで、その時々の業務に合わせて働く環境を選べるようになりました。1人で集中したい作業は集中ブースで、反対に視野広く仕事をしたいときなどには、社内のカフェラウンジスペースでゆっくり考えながら仕事をする、なんてこともできるようになりました。固定された自席だけでなく、その時々に最適な空間を選べることで、業務における生産性の向上になっていくのではないかと感じています。

蓮山 管理職としては、個室会議室を事前予約することなく、フリースペースを活用することで気軽に打ち合わせができたり、役員とのミ-ティングもすぐに行えることで、経営スピードを上げることにも役立っていると思います。またカフェラウンジやライブラリーに人が集まり、自然と情報交換が出来るようになりました。従来では顔を合わせなければ実現しにくかった賃貸と売買部署との協業案件が、ビジネスに繋がるケースも増えてきています。

小笠原 私たちは、新オフィスをショールームとして位置づけており、移転を検討されている企業様にご覧いただけるような取り組みも行っています。オフィスを変えることの意義をより理解していただくための、我々の新しい営業ツールにもなっています。現在までに約1,000名の方々に来社いただいております。

蓮山 新オフィスの見学では、移転ご担当者だけでなく、役員・経営層の方々に直接ご来社いただけるケースが増えています。やはり、経営層自らがオフィス移転を機に、働き方改革を行い、経営課題の解決を目指されている企業が増えてきていると感じています。

ビル営業一部 小笠原 啓史

──これから移転する企業に向けて伝えたい、移転に重要なポイントとはなんでしょうか。

小笠原 一つめは、賃貸オフィスマーケットの動向は様々な要因で変化しますので、現時点や今後のマーケットを把握した上で、意思決定時期や移転のスケジュールを想定しておくことが重要となります。
二つめは、オフィス移転に求める希望条件を具体的に設定し、移転で想定する年間賃料や移転工事費用などのコストシミュレーションを事前に行うことです。
三つめは、希望にかなう条件の物件が出てきた際に、スピーディーな自社の意思決定ができる準備体制を整えることが重要となります。空室が少ないために、優良な募集物件に対しては多くの企業が入居検討を行うため、複数の入居検討企業が競合してしまうケースが増えてきているためです。

──今後移転する企業に向けて伝えたい、実際に移転を経験して感じたこととして、ポイントがあれば教えてください。

蓮山 一つ目は、移転の目的を明確にすることです。会社の将来のビジョンや採用計画・事業計画に基づいて、どういったオフィスでどういう働き方をするのかを決定することが必要になります。二つ目は、現状のオフィスの課題を分析し、移転先の要件を具体的に決定することが重要だと考えています。三つ目は、移転するまでに、全社で移転の目的を共有し、意識改革することが必要です。経営トップだけでなく、社員まで浸透しないと移転しても働き方は変わりません。

移転先のオフィスをお探しの企業様、将来的な移転を考えておられる企業様に対して総合的なサポートを提供いたします。オフィスに関してお困りのことがあれば、ぜひお気軽にご相談ください。

三菱地所リアルエステートサービス
ビル営業二部 課長

蓮山 正志

2007年入社 賃貸仲介業務一筋。 オフィス戦略立案のサポートと賃貸仲介を行う。当社移転プロジェクトの移転事務局も経験。 モットーは「お客様のベストパートナーを目指して」

三菱地所リアルエステートサービス
ビル営業一部

小笠原 啓史

2010年入社 賃貸仲介業務一筋。 多くのオフィス移転業務以外にも、大規模なクリニック移転なども経験。モットーは「お客様にとって身近な存在となれる営業を!」

三菱地所リアルエステートサービス
ビル営業一部

柴 理沙子

2017年入社。 ベンチャー・スタートアップの企業を中心としてオフィス移転のご相談やサポート業務を行う。持ち前の笑顔でお客様と打ち解けるのが得意。モットーは「お客様にとってより良い提案を」

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