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鑑定部特別インタビュー 平成29年度相続税路線価公表。問われる「街のちから」を反映して、さらなる二極化時代へ 三菱地所リアルエステートサービス株式会社 鑑定部次長不動産鑑定士 山中英明氏
7月3日、平成29年度の相続税路線価(以下「路線価」という。)が公表されました。弊社鑑定部次長山中英明に今回の路線価の傾向と今後についてインタビューを行いました。

路線価とは

1.路線価とは何か、またその特徴について

道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの評価額を路線価といい、年に一度公表されます。調査主体は国税庁です。相続税や贈与税の財産を評価する際、相続等の対象となる土地の評価額の算出に用いることが目的です。
地価公示価格、路線価、地価調査価格はそれぞれ調査主体が違い、地価公示価格は国土交通省、路線価は国税庁、地価調査価格は都道府県です。

2.なぜ、調査主体の違う地価が複数存在するのか

「地価公示価格」は、国民の生活に大きな影響のある不動産価格について、適正な取引に資するための基準にするという目的があります。
1月1日を基準日として公示地価が公表されますが、1年の間にも土地の値動きはあります。期の途中で価格の推移を見極める意味もあって、都道府県が地価調査を実施して発表するのが「地価調査」です。
「路線価」も各年1月1日を基準日としています。路線価は相続手続きの際に用いるもので、取引を適正に行うためというよりも、どこにある不動産でも適正且つ公平に評価しなければいけない、そのために細かくポイントを設定しているわけです。基本的には、路線価は公示地価の約80%の価格になります。

3.事業法人は路線価をどのように活用できるか

公示価格は一ヶ所のポイントの価格ですから、そのポイントの価格はわかっても、少しでも外れた地点の価格はわかりません。その点、路線価は道路ごとに設定されているため、価格を知りたい不動産がどの道路に面しているかによって、簡単に価格がわかります。評価されている地点も多く、公示価格よりも発見しやすいため、外国の投資家が日本に参入する際に路線価を参考にしたという話もよく聞きます。

2.平成29年度路線価の概況

1.上昇傾向の継続

土地価格の上昇傾向が継続し、平均変動率が2年連続でプラスになりました。東京・銀座の路線価は4032万円で、バブル期を超えて過去最高額となっています。しかしここで注意しなければならないのは、バブル期は「土地神話」が横行していて全体的に高かったということです。現在は全体が高いわけではなく、面ではなく点が高い、点が過熱しているイメージです。面で盛り上がってこないので、その地点に関しては恩恵があっても、近隣はそうではないケースが多々ある。このため、バブル期のような豊かさや好況感が浸透している訳ではありません。

2.上昇した13都道府県、下落する地方都市

繁華性のある13都道府県で上昇した一方で、地方都市32県においては下落が続いています。路線価が上昇している地域がなぜ上昇したかを見ることによって、下落を続ける地方都市が上昇に転換できない原因も見えてきます。下落傾向にある地域は、いわば特徴がないことを特徴として、上昇の兆しが見えなくなってしまうのです。

3.特徴ある上昇を見せた10地域

私が今回の路線価発表にあたり、注目したのは次の10地域です。

1.札幌

札幌駅周辺の再開発が成功を収め、道内の最高路線価が札幌駅前となっています。かつては、札幌駅からメインストリートを南下した「大通公園」や「ススキノ」エリアが札幌の中心でしたが、駅周辺の再開発の成功によって、最高路線価が駅前に移りました。すると、今度は逆に札幌駅前から「大通公園」「ススキノ」に向かってビルの建て替えや再開発の動きが広がりを見せています。それと、札幌駅からススキノまで地下道が整備されたことも人の流れがより多くなりましたね。このように、札幌では再開発の流れをうまく活かして街づくりを行い、「街のちから」を高めています。

2.ニセコ

北海道では、ニセコも全国指折りの路線価上昇率を示しています。以前からパウダースノーが有名でしたが、リゾート目的の外国人が押し寄せるようになり、世界的にもスキーヤー憧れの場所として発展しました。欧米やオーストラリアからの観光客が多く、彼らを見込んでシンガポールや中国の資本が入ってきているほか、国内の総合リゾート運営会社も超高級マンションを建てました。こうした事業が成り立つとなれば、さらに高級な施設が建てられ、「街のちから」がさらに高まっていくでしょう。

3.仙台

震災後、復興需要が盛り上がった時期を経て、現在は発展・成長の段階に移行しています。復興については、地元民や地元企業のがんばりに加えて、支援や財源があっての成果でしたが、いまは自分たちで街を良くしていくという気概が強くみられます。地下鉄が延伸し、新駅ができて人が市内に入ってきやすくなったことが大きな後押しとなりましたし、観光客を呼び込むビジネスも盛んで、駅周辺ビルや郊外の商業施設(ショッピングセンター)が市内で竣工しています。
仙台はもともと繁華街や公共事業など、人の集まる力が強く、ブランド力が強い街で、それは復興への推進力にも見て取れました。自治体に力があり、優秀な人材も多く、資金も潤沢に用意できます。その上で、市民の街づくりへの協力姿勢もあるという、まさに「街のちから」が強い地域です。

4.東京

今年の路線価は「東京の一人勝ち」と言いたくなるような結果でした。ビジネスの中心地であるだけでなく、観光資源にも恵まれていて、人もお金も集まりやすい環境が整っています。再開発をはじめ、観光資源をうまく活用したり磨いたりしているエリアは不動産の需要も高く、それが地価に反映されています。
それでは、大・丸・有(大手町・丸の内・有楽町一丁目)から見ていきたいと思います。
先ず、大手町。最高路線価は大手町2-2-1の2023万円。対前年比6.8%上昇。4年連続の上昇となっています。
次に、丸の内。最高路線価は丸の内2-4-1の2395万円。対前年比6.4%上昇。5年連続の上昇となっています。
残すは、有楽町一丁目。最高路線価は有楽町1-7-1の1901万円。対前年比7.8%上昇。4年連続の上昇となっています。
ちなみに、丸の内2-4-1は千代田区内の最高価格となっています。
大・丸・有以外で特徴的なのが港区の虎ノ門や新橋界隈です。虎ノ門では再開発が進み、大規模なビルの建設が今後も予定されています。虎ノ門からマッカーサー通りを下った新橋でも、界隈の再開発を見据えた高い取引が行われており、路線価の上昇のみならず、実際の取引額は路線価の数倍だったという話も耳にします。
街づくりとは難しいもので、新しい需要の喚起、すなわち人を呼び込むことが出来る街づくり、人の流れが作れる街づくり、が重要なテーマとなってきています。例えば、昨年の海外からの観光客が2400万人を突破したというニュースを耳にされたと思いますが、今では観光客相手のビジネスにとどまらず、海外からの定住者を増やそうとしています。その方策のひとつとして、商業施設や病院などにその国や地域出身の職員や、英語が話せるスタッフを置くなど、安心して移住定住できるような配慮を行っています。
このあたりの街づくりは、シンガポールがひとつのモデルケースとなっているように思います。国際都市TOKYOの代表的なエリアとしての六本木、そして虎ノ門。そうした街づくりの方向性を感じます。実際に再開発を手がけるのは民間ですが、こうした方針は人口が減っていく中で、都市「TOKYO」の国際競争力を高め、強いては国力を高めるための国策のひとつでもあると感じます。